スペイン語を勉強して、はじめてネイティブとメッセージのやりとりをしたとき。教科書で習ったとおりの、ていねいな文を書いて送りますよね。
そして返ってきた返事が、「jajaja q tal, ntc tqm」。……1文字も読めない、という経験をした人はとても多いんです。
安心してください。1つずつ丸暗記する必要はまったくありません。
スペイン語のチャット略語には、作られ方が3種類しかないんです。この3つの型さえ知っていれば、はじめて見る略語でも「たぶんこれのことだな」と推測できるようになりますよ!
その前に:日本語の「w」「草」は、世界的にかなり特殊です
いきなりスペイン語に入る前に、少しだけ自分たちの言葉を振り返ってみましょう。ここを通ると、スペイン語の略語がびっくりするほど素直に見えてきます。
日本語でチャットをしていて笑うとき、私たちは何と書くでしょうか。「w」「www」「草」「(笑)」あたりですよね。
この「w」がどこから来たかというと、「笑(わらい/warai)」のローマ字の頭文字です。つまり出発点は「笑い声」ではなく「笑という漢字」でした。
そして「w」がたくさん並んだ様子が草むらに見える、というところから「草」という言い方が生まれ、さらに「草が生える」という動詞にまでなりました。
「笑う」という漢字
↓(ローマ字の頭文字を取る)
w
↓(並べて量を表す)
www
↓(見た目が草むらに見える)
草/草が生える
そうなんです。日本語話者は「笑い声を音でそのまま書く」という発想からいちばん遠いところにいるんですね。
だからこそ、スペイン語のチャットを見たときに驚くはずです。スペイン語は、笑い声を、聞こえたとおりの音でそのまま書くんですから。
作り方その1:音をそのまま字にする(jajaja)
スペイン語のチャットでいちばんよく見るのが jajaja です。
これは略語ですらありません。笑い声の音を、そのまま文字にしただけです。
ここで日本語話者がまず引っかかるのが読み方です。「ジャジャジャ?」と読んでしまいがちですが、違います。
スペイン語の j は、英語の h に近い、のどの奥から出る息の音です。つまり jajaja は「ハハハ」と読みます。
まさにそのとおりです!
スペイン語で h は発音しない文字なので、hahaha と書くと「アアア」になってしまうんですね。だから「ハ」の音を出す文字である j を使って jajaja と書く。スラングではなく、ごく普通のつづり方なんです。
さらにおもしろいのが、母音を変えると笑いの表情が変わるという点です。
jajaja(ハハハ)⇒ ふつうに笑っている。いちばん標準的
jejeje(へへへ)⇒ 照れ笑い、ちょっと後ろめたい笑い
jijiji(ヒヒヒ)⇒ いたずらっぽい、くすくす笑い
jojojo(ホホホ)⇒ 低く豪快な笑い。サンタクロースのイメージ
そして長さがそのまま笑いの量になります。ja だけなら愛想笑いに近く、jajajajajajaja と長ければ本気で笑っています。
作り方その2:文字を「音」で置き換える(q・x・k)
2つ目の型が、初学者にとっていちばん解読しづらいところです。
スペイン語のチャットでは、1文字のアルファベットを、その文字が表す「音」として読ませるということをします。
q = que(q という文字の名前が「ケー」なので)
x = por(掛け算の記号「×」を por と読むから)
k = qu(同じ「カ行」の音を、より短い文字で書く)
いい疑問です! ここだけ理屈がまったく別なんですよ。
スペイン語では、掛け算の「3 × 4」を tres por cuatro と読みます。つまり「×」という記号は、そのまま por と読む記号なんですね。
その感覚のまま、アルファベットの x を por の代わりに使うようになった、というわけです。
この一点を知っているだけで、読める文字列が一気に増えます。
xq = por que / porque(なぜ/なぜなら)
xa = para(〜のために)
x favor・xfa・x fa = por favor(お願いします)
xo = pero(でも)
x q・pq = どちらも porque と同じ役割
半分そうです! tqm は te quiero mucho の頭文字ですが、この q を k に置き換えて tkm と書く人もたくさんいます。
tqm と tkm は、まったく同じ言葉。qu を k で書いただけの違いなんです。
作り方その3:語の頭文字だけを残す(ntp・ntc)
3つ目は、いちばん想像しやすい型です。フレーズの各単語の頭文字だけを並べるというもの。
日本語でも「よろしくお願いします」を「よろ」、「お疲れさま」を「おつ」と縮めますよね。あの感覚に近いのですが、スペイン語はもっと徹底していて、3語のフレーズが3文字になります。
ntp = no te preocupes(心配しないで/気にしないで)
ntc = no te creas(冗談だよ/なんてね)
鋭いですね、そこがこの2つの最大の注意点です!
ntp は「相手」を安心させる言葉。ntc は「自分」の直前の発言を冗談に戻す言葉。向きが正反対なんです。
日本語でいうと、ntp が「ドンマイ」「気にしないで」、ntc が「なんてね」「うそうそ」にあたります。
もう1つの核:句読点と大文字が「温度」を運ぶ
ここまでで略語の読み方は分かりました。でも、実際のチャットを読めるようになるには、もう1つ知っておきたいことがあります。
それは、同じ略語でも、書き方によって温度がまるで違うということです。
同じ tqm でも温度が違う
tqm ⇒ 軽い。会話の締めにさらっと添える感じ
tqm! ⇒ 少し気持ちがこもる
TQM!!! ⇒ かなり強い。うれしさや感謝があふれている
※大文字は「声が大きい」感覚。英語圏と同じで、文章全体を大文字にすると叫んでいる印象になります。
そしてもう1つ、初学者が必ず戸惑うのがスペイン語独自の記号の省略です。
スペイン語には、疑問文の頭に ¿、感嘆文の頭に ¡ を置くという、他の言語にはほとんどないルールがありますよね。教科書ではもちろん必須です。
ところがチャットでは、この開きの記号がほぼ省略されます。
教科書とチャットの差
教科書:¿Qué tal?(元気?)
チャット:q tal? または q tal
教科書:¡Gracias!
チャット:graciasss / grax
ここは誤解しないでほしいところなのですが、正書法としては開きの記号は必須です。スペイン語の正式なルールでは、疑問符も感嘆符も必ず「前後2つセット」で使います。
それでもチャットでは省略が当たり前になっている。「くだけた場面の書き方」として存在していると理解しておけば大丈夫ですよ!
これだけ押さえれば読める!チャット略語ミニ辞典
3つの型が分かったところで、実際によく飛んでくる略語をまとめておきます。無理に暗記しなくても、「どの型で作られているか」を見れば意味が透けて見えるはずです。
よく見る略語一覧
【音を字にする型】
jajaja = ハハハ(笑い)/jeje = へへ/jiji = ヒヒ
【音で置き換える型】
q = que/k = que・qu/x = por/xa = para
xq・pq = porque, por qué/xfa = por favor/xo = pero
salu2 = saludos(2 を dos と読ませる応用形)
【頭文字型】
tqm・tkm = te quiero mucho/ntp = no te preocupes
ntc = no te creas/bss = besos(キス=親愛の挨拶)
tb・tmb = también(〜も)/fds = fin de semana(週末)
【つづりを縮める型】
grax・grcs = gracias/msj = mensaje(メッセージ)
bn = bien(元気・OK)/toy = estoy(〜にいる、〜の状態だ)
pa = para/aki = aquí(ここ)
まさにその発想です! 数字を音として読ませるのは、どの言語のチャットにも共通する遊びなんですね。
ここで実際のメッセージを読んでみましょう。冒頭に出した文が、もう解けるはずですよ。
実際のチャットを解読してみよう
jajaja q tal, ntc tqm
↓
Jajaja, ¿qué tal? No te creas. Te quiero mucho.
(ハハハ、元気? なんてね。大好きだよ。)xfa dime xq no viniste
↓
Por favor, dime por qué no viniste.
(お願いだから、なんで来なかったのか教えて。)ntp, toy en casa. nos vemos el fds
↓
No te preocupes, estoy en casa. Nos vemos el fin de semana.
(気にしないで、家にいるから。週末に会おうね。)
いちばん大事な話:「読める」と「自分で使う」は別です
最後に、この記事でいちばん伝えたいことをお話しします。
まず目指すべきは「読める」であって、「使える」ではありません。
チャット略語は、世代・国・相手との距離によって許容度がまったく違います。
同い年の友達どうしなら自然でも、仕事のメッセージや、目上の相手、初対面の人に使うと一気に軽く見られます。これは日本語で取引先に「りょ」と返さないのと同じ感覚です。
しかも、外国語学習者が略語を使うと、母語話者よりもずれた印象になりやすいという難しさがあります。母語話者は「この相手にはここまで」という肌感覚を持っていますが、学習者はまだそれを持っていないからです。
学習者におすすめの進め方
第1段階:全部「読める」ようにする(この記事のゴール)
第2段階:自分から使うのは jajaja と q くらいまで
第3段階:相手が使ってきた略語だけ、同じものを返す
⇒ この順番なら、失礼になることはまずありません。
そうなんです、これが一番かしこいやり方です!
相手のメッセージがそのままお手本になりますからね。相手が jajaja と書いてきたら jajaja を返す。それだけで、ぐっと自然なやりとりになりますよ。
スペイン語のチャット略語まとめ
以下、この記事の要点のまとめです。
⇒①音をそのまま字にする(jajaja, jeje, jiji)
⇒②文字を音で置き換える(q=que/x=por/k=qu)
⇒③語の頭文字だけ残す(ntp, ntc, tqm)
●スペイン語の j は英語の h の音なので、jajaja は「ハハハ」
●x が por なのは掛け算記号「×」を por と読むから。ここから xq, xa, xfa が一気に読める
●ntp(心配しないで)と ntc(なんてね)は1文字違いで役割が正反対
●句読点と大文字が温度を運ぶ(tqm / tqm! / TQM!!!)。チャットでは ¿ ¡ が省略されがち
●まずは「読める」を目標に。使うのは jajaja と q くらいから
jajajaの意味と読み方|スペイン語の「ハハハ」を1本で完全解説
tqm・tkmの意味|スペイン語の「大好き」はte amoとどう違う?
xqの意味とは?スペイン語チャットの「x=por」「q=que」を根本から理解する
ntpとntcの意味と違い|スペイン語の「気にしないで」と「なんてね」
「Wikilengua del español, Abreviaturas en chats y microblogs(https://www.wikilengua.org/index.php/Abreviaturas_en_chats_y_microblogs)」
「Fundéu Guzmán Ariza, ja, ja, ja, no jajaja(https://fundeu.do/ja-ja-ja-no-jajaja/)」
「Español con María, Diccionario para chatear en español(https://espanolconmaria.com/diccionario-para-chatear-en-espanol/)」
「Infobae, ¿Qué significa TKM y cómo RAE explica el “lenguaje millennial”?(https://www.infobae.com/america/peru/2022/09/17/que-significa-tkm-y-como-rae-explica-el-lenguaje-millennial/)」