どちらも日本語にすると「愛してる」になってしまう、スペイン語の2大表現です。
でも、この2つは交換できません。「どちらが強いか」ではなく「どこまで使えるか」が違うんですよ!
いい質問です!実はそこ、スペイン語圏の人でも「国によって答えが変わる」ほど奥が深いところなんです。
まずは辞書がこの2語をどう定義しているか、そこから一緒に見ていきましょう!
- 1 te quiero と te amo の意味 | 辞書はこう定義している
- 2 querer の正体は「求める」| ”quiero un café” と ”te quiero” が同じ動詞な理由
- 3 amar は「重い」| 使われる場面がはっきり限られる
- 4 「te quiero=軽い」は誤解 | 目盛りではなく“範囲”で考える
- 5 データで見る使用頻度 | 「メキシコは te amo をよく使う」は本当か
- 6 日本語の「好き」「愛してる」と比べてみる
- 7 一緒に覚えたい関連表現5つ
- 8 発音と活用 | 「テキエロ」「テアモ」を正しく言うために
- 9 使い分けの実践 | 場面別の早見表
- 10 te quiero と te amo の違い まとめ
te quiero と te amo の意味 | 辞書はこう定義している
いきなり結論から入る前に、スペイン語の「本家」であるスペイン王立アカデミー(Real Academia Española、略してRAE)の辞書がどう書いているかを確認しておきましょう。ここが一番の土台になります。
”querer(発音:キエレール【動詞】)”は、①「望む・欲しがる」②「愛情を持つ・大切に思う」という2つの顔を持つ動詞です。
一方の”amar(発音:アマール【動詞】)”は、「愛を抱く」というただ一つの意味だけを持ちます。
RAE辞書の定義(スペイン語原文と日本語訳)
【querer】
1. tr. Desear o apetecer.
(〜を望む、欲する)
2. tr. Amar, tener cariño, voluntad o inclinación a alguien o algo.
(誰か・何かを愛する、いつくしみや好意、心の傾きを持つ)【amar】
1. tr. Tener amor a alguien o algo.
(誰か・何かに愛を抱く)
2. tr. p. us. desear.
(望む、欲する)
※「p. us.」は poco usado の略で、「あまり使われない語義」を示すRAEのラベルです
よく気づきましたね、そこが今日一番面白いところです!
実はこの2つの動詞、辞書の上できれいな「鏡写し」の関係になっているんです。
querer⇒語義1が「望む」、語義2が「愛する」
amar⇒語義1が「愛する」、語義2が「望む」
どちらの動詞も「望む」と「愛する」の両方を持っている。違うのは、その順番と重みだけなんですよ!
あるんです!ただし amar の「望む」には p. us.(あまり使われない) というラベルが付いています。
逆に querer の「愛する」にはそういうラベルがありません。querer で「愛する」を表すのは、辞書の上ではごく普通のことなんですね。
”querer”と”amar”は鏡写しの関係
querer
語義1:望む・欲する
語義2:愛する・大切に思う ←ラベルなし=普通に使う
amar
語義1:愛を抱く
語義2:望む・欲する ←p. us.=あまり使わない
⇒2つの動詞は同じ2つの意味を、逆の重みで持っている
ここは日本の学習者がつまずきやすいところなので、先に強調しておきます。
ネット上の解説では「te quiero=軽い好き、te amo=重い愛してる」と、1本の目盛りの上に並べて説明されることがとても多いのですが、この理解のまま使うと必ずどこかで事故が起きます。
ひとつ、注意しておきたいことがあります。
スペイン語圏のネット記事でも「RAEによれば amar のほうが深い愛だ」という書き方をよく見かけます。でもRAEがそんな判定を下したことは一度もありません。
あれは辞書に並んだ2つの語義を、書き手が自分の言葉で言い換えたものなんです。辞書が教えてくれるのは「意味の範囲」までで、気持ちの深さの順位づけではない、と覚えておいてくださいね!
⇒ te quiero と te amo は「強さの目盛り」ではなく「使える範囲」が違う
⇒ te quiero=家族・友人・恋人・ペットまで全部カバーする日常語
⇒ te amo=場面が限られる特別な言葉(恋愛の告白・結婚式・詩・歌詞など)
⇒そして最大のポイント。実際のデータではte amo は「話し言葉」にはほとんど出てこない
querer の正体は「求める」| ”quiero un café” と ”te quiero” が同じ動詞な理由
まず querer から攻略しましょう。この動詞を理解すると、スペイン語の愛情表現がまるごと見通せるようになります。
スペイン語のカフェで「コーヒーをください」と言うとき、こう言いますよね。
Quiero un café.(コーヒーが欲しいです)
そして恋人にはこう言います。
Te quiero.(愛してるよ)
実はこれ、まったく同じ動詞 quererなんです!
その感覚、すごく自然です!でも語源をたどると、ちゃんと納得できる流れがあるんですよ。
querer はラテン語の「quaerere(クアエレレ)=探す、求める」から来ています。RAEの辞書にも語源として ”buscar(探す), pedir(求める)” と明記されているんです。
この「探す・求める」というラテン語 quaerere は、実は英語にもたくさんの子孫を残しています。
- question:答えを「求める」もの ⇒ 質問
- quest:何かを「探し求める」旅 ⇒ 探求、冒険
- require:繰り返し「求める」 ⇒ 必要とする、要求する
- inquire:中へ入り込んで「探る」 ⇒ 問い合わせる
スペイン語の中でも requerir(要求する)、adquirir(獲得する)、cuestión(問題)、búsqueda と対になる pesquisa(捜査) などが同じ一族です。
ラテン語:quaerere(探す・求める)
↓(後期ラテン語で「望む」へ)
「desear(欲しがる)」=現代スペイン語の第1義
↓(12世紀ごろ、人に向けた「求める気持ち」が愛情へ)
「amar, tener cariño(愛する・大切に思う)」=現代スペイン語の第2義
目印は前置詞の ”a” | 人が相手のときは a をつける
スペイン語には「a personal(前置詞 a の人称用法)」と呼ばれるルールがあります。動詞の目的語が特定の人を指すとき、その前に a を置くというものです。
RAEの『Diccionario panhispánico de dudas』でも、愛情や評価を表す動詞(amar、admirar など)が人を目的語に取るときは a が必要だと説明されています。
a の有無で意味が変わる
【a なし=欲しい】
・Quiero un café.
(コーヒーが欲しい。)
・Quiero ese libro.
(あの本が欲しい。)【a あり=愛している・大切に思う】
・Quiero a mi madre.
(母を愛している/母が大切だ。)
・Quiero mucho a mis abuelos.
(祖父母のことがとても大切だ。)
・Quiero a mi perro.
(うちの犬が大好きだ。)
この a、初学者のうちは「なんで必要なの?」と感じるかもしれません。でも今回のテーマにおいては、「欲しい」と「愛してる」を分ける命綱なんです。
ちなみに ”Te quiero.” の te はもともと「君を」を表す代名詞なので、この形では a は表に出てきませんよ!
鋭いですね!その場合は人を直接の目的語にせず、”Quiero que María venga.”(マリアに来てほしい)のように文の形にします。
だから ”Quiero a María.” と言えば、ほぼ確実に「マリアを大切に思っている」の意味になるわけです。うまくできていますよね!
”querer + 動詞の原形” は「〜したい」
もうひとつ、querer には英語の want to にあたる使い方があります。後ろに動詞の原形(不定詞)を置く形です。
【例文】
・Quiero aprender español.
(スペイン語を学びたい。)
・¿Quieres bailar conmigo?
(僕と踊りませんか?)
・Quiero decirte una cosa.
(君にひとつ言いたいことがあるんだ。)
3つ目の ”Quiero decirte una cosa.” は、RAEの文法書でも取り上げられている表現です。日本語の「ちょっと話があるんだけど」に近い、会話の切り出しとして非常によく使われます。
amar は「重い」| 使われる場面がはっきり限られる
続いて amar を見ていきましょう。querer が多義語だったのに対して、amar はきわめてシンプルです。
辞書を引き比べると、この2語の性格の違いが一目で分かります。
querer⇒語義がずらりと10個以上
amar⇒語義はわずか2つ、しかも2つ目は「あまり使わない」扱い
querer が生活のあらゆる場面に顔を出す働き者なのに対して、amar は実質「愛する」という一点のために存在している動詞なんですよ!
amar の語源はラテン語の amare。ここから amor(愛)、amante(恋人)、amigo(友達)、amistad(友情) といった単語が生まれています。
ちなみに、この amare 自体がどこから来たのかは実ははっきりしておらず、amma(幼児が母を呼ぶ声)のような、赤ちゃん言葉に由来するのではないかという説が有力とされています。母と子の情愛を表す言葉が出発点だったのかもしれない、というのは少しロマンのある話ですよね。
そうなんです、amigo は「愛される人」がもとの姿。反対語の enemigo(敵) は「in-(否定)+ amigo」で「愛さない人」ですよ!
さて、では肝心の te amo は、実際にどんな場面で登場するのでしょうか。
・恋愛関係での、特別な告白や愛の確認
(付き合ってすぐではなく、関係が深まった段階で出てくることが多い表現です)
・結婚式の誓いの言葉
(人生の節目にふさわしい重みを持つ語として選ばれます)
・詩・小説・歌詞などの創作物
(スペイン語の恋愛ソングは te amo だらけと言っても大げさではありません)
・宗教的な文脈
(神への愛、隣人愛など。amar は聖書の翻訳でも中心的に使われる動詞です)
逆にいえば、友達と別れぎわに軽く声をかけるときや、電話を切るときの一言に te amo を持ち出すと、多くの地域では場違いに響きます。そこは te quiero の担当領域です。
「te quiero=軽い」は誤解 | 目盛りではなく“範囲”で考える
いいえ、そこが最大の落とし穴です!まったくそんなことはありません。
スペイン語圏には、何十年も連れ添った夫婦が毎日 te quiero と言い合っている家庭がいくらでもあります。te quiero は「愛が足りない」のではなく、「守備範囲が広い」だけなんですよ。
2つの言葉の関係は、強さのメーターで表すよりも、「どこまでカバーするか」という範囲の図で捉えたほうが実態に近くなります。
”te quiero”と”te amo”の守備範囲
te quiero が使える相手
⇒ 恋人/配偶者/親/子ども/きょうだい/祖父母/親しい友人/ペット
=大切に思っている相手すべて
te amo が使える相手
⇒ 恋人/配偶者(地域によっては親子も)
=特別な関係・特別な場面に限られる
つまり、te amo が言える相手には、たいてい te quiero も言えます。しかしその逆は成り立ちません。友人に te amo とは言えないからです。
ペルーのピウラ大学が運営する言葉のサイトに、この2語を扱った面白い記事があります。そこではこんな整理がされているんです。
querer⇒語源の「求める」から、相手を自分のものにしたいという方向のニュアンスを含む
amar⇒相手に差し出す・捧げるという方向のニュアンスを含む
そして、「Amo a mis hijos.(子どもたちを愛している)」と「Quiero a mis hijos.」は、この文脈では同じ意味になるとも書かれています。文脈しだいで、2語はぴったり重なることもあるんですね。
その掴み方、とても良いです!
ただし念のために言っておくと、これは「語源から見た傾向」であって、実際の会話でいちいち意識されているわけではありません。日常では te quiero がごく自然な愛情表現として飛び交っていますよ。
データで見る使用頻度 | 「メキシコは te amo をよく使う」は本当か
ここからは、学習者が一番混乱しやすい「地域差」の話です。
この話題には「スペインでは te quiero ばかりで、メキシコでは te amo をよく使う」という通説が広く出回っています。しかし実際のコーパス(大量の文章を集めて統計を取るためのデータベース)を調べると、この通説はデータと合いません。
RAEが公開しているCREAコーパス(1975〜2004年)で、国ごとに te quiero と te amo が何回ずつ現れるかを比べた結果が以下です。
国別「te quiero : te amo」の比率(CREA 1975〜2004)
キューバ 11 : 1
ペルー 5.7 : 1
スペイン 5.0 : 1
メキシコ 4.3 : 1
ベネズエラ 4.2 : 1
アルゼンチン 2.8 : 1
チリ 1.6 : 1
コロンビア 1.3 : 1
⇒すべての国で te quiero のほうが多い
そこに気づけたら大したものです!
スペインとメキシコは、ほぼ同じ比率なんです。よく言われる「メキシコは te amo をよく使い、スペインは使わない」という対比は、少なくともこのデータからは支持できません。
実際に te amo 寄りなのは、メキシコではなくコロンビアとチリのほうなんですよ。
いいえ、その感覚のほうは正しかったんです!ただし「国」で分かれるのではありませんでした。
本当の分かれ目は、まったく別のところにあったんですよ。次がこの記事の一番の核心です!
本当の分かれ目は「国」ではなく「話すか、書くか」
同じCREAコーパスを、国ではなく「どんな種類の文章か」で分けて集計すると、景色が一変します。
話し言葉と書き言葉で比べると
●話し言葉(口語サブコーパス)
te quiero 155回 : te amo 8回 = 約19 : 1
●書き言葉(書籍)
= 約4.1 : 1
⇒実際の会話では、te amo は圧倒的に出てこない
ここが決定的です。書き言葉では4対1だったのに、話し言葉では19対1まで差が開くんです。
つまり te amo はほとんど「書く・歌う・演じる」ための言葉で、生活の会話にはめったに登場しないということなんですね!
まさにその通りです、見事なまとめですね!
「te amo はメロドラマっぽい」という世界中の学習者が抱く感覚は、気のせいでも思い込みでもありませんでした。te amo が実際に多く現れるのは小説・歌詞・脚本といった作られた言葉のほうなんです。
だからこそ「国で覚える」のではなく「話し言葉か、書き言葉か」で覚えるほうが、ずっと実用的なんですよ!
データを読むときの注意点
数字は強力な武器ですが、扱い方を間違えると誤解のもとになります。今回のデータについては、以下の3点を必ず添えておきます。
・比べてよいのは「国の中での比率」だけ
※国ごとの収録量が違うため、国どうしで件数そのものを比べることはできません。「キューバは11、コロンビアは1.3」は各国内での te quiero と te amo の比であり、「キューバ人のほうがよく愛を語る」という意味ではありません。
・口語データはスペインに偏っている
※19対1という数字は、スペインの話し言葉の影響を強く受けています。他の国の会話でも同じ比率になるとは限りません。
・2004年までのデータである
※CREAが収録しているのは2004年までです。スマートフォンやメッセージアプリが普及して以降の用法は反映されていません。文字で愛情を伝える機会が激増した現在、状況が変わっている可能性は十分にあります。
特に3つ目は重要です。te amo が「書き言葉」の表現だとすると、毎日文字でやり取りする時代になって出番が増えていても不思議ではありませんよね。
データは「かつてこうだった」ことしか教えてくれません。そのうえで、目の前の相手がどう話すかを見るのが一番ですよ!
迷ったらte quieroで大丈夫です!
どの国のデータでも te quiero のほうが多く、会話ではその差がさらに開く。te quiero はどこでも通じる“安全側”の表現だと覚えておきましょう。
有名な曲のタイトルが裏づけていること
「te amo は歌の言葉」という話は、実際のヒット曲を並べてみるとよく分かります。
- Hombres G「Te quiero」:スペインのバンド。1980年代にスペイン国内チャートで1位を獲得した大ヒット曲
- Franco de Vita「Te amo」:ベネズエラの歌手による1988年の代表曲。中南米で広く愛されているバラード
- José José「El amar y el querer」:メキシコの歌手が歌う、まさに「amar と querer の違い」そのものがテーマの一曲
3曲目の「El amar y el querer」は、スペイン語圏では誰もが知る名曲です。
歌詞では「querer できる人はたくさんいるけれど、本当に amar できる人はごくわずか」という趣旨のことが歌われます。ネイティブ自身がこの2語の差を歌にしてしまうくらい、微妙で語りがいのあるテーマなんですね!
日本語の「好き」「愛してる」と比べてみる
ここで少し視点を変えて、日本語と並べてみましょう。実はこの比較をすると、スペイン語側の感覚がぐっと掴みやすくなります。
そこなんです!日本語では「好き」だけで恋愛の告白が成立してしまう一方で、「愛してる」は重すぎて避けられる傾向がありますよね。
この感覚があるので、te amo の“重さ”は日本語話者にとってむしろ理解しやすいんです。「ああ、日本語の『愛してる』と同じで、そう簡単には言わない言葉なんだな」と。
問題はもう一方、te quiero のほうです。
スペイン語圏では、子どもが学校に出かけるとき、親が「¡Te quiero!」と声をかけるのがごく普通の光景です。電話を切るときも、寝る前も、けんかの後の仲直りにも。
つまり家族に向かって、毎日のように愛情の言葉を口にする文化があるんですね。
そこが日本語話者にとって一番の驚きポイントだと思います!
私たちはつい「te amo をどう訳すか」ばかり考えてしまいますが、本当のハードルは te quiero を言えるようになるほうなんです。
日本語に「毎日家族に言う愛情の言葉」がぴったり対応しないので、訳語ではなく使う場面ごと覚えてしまうのがおすすめですよ!
日本語とのズレを整理すると
●日本語の「愛してる」≒ te amo
⇒どちらも日常では言わない、特別な言葉。ここは対応しやすい
●日本語の「好き」≠ te quiero
⇒「好き」は主に恋愛や好みに使うが、te quiero は家族・友人にも毎日使う
⇒日本語に一対一で対応する語がない。ここが最大の落とし穴
一緒に覚えたい関連表現5つ
せっかくなので、愛情表現の仲間もまとめて押さえてしまいましょう!
どれも会話やドラマ、歌詞に頻繁に出てくる表現ばかりですよ。
1. ”Te quiero mucho.”(とても大切に思っているよ)
mucho(とても)を足した形です。「te quiero より愛情が強い」というよりは、親しみをストレートに強めた言い方として、家族や友人に向けてよく使われます。
メッセージの結び、誕生日カード、久しぶりに会った友人への一言などで大活躍する表現です。
2. ”Te adoro.”(あなたに夢中だよ/大好き)
動詞 adorar は、もともと「神を崇拝する」という意味の語。そこから転じて、RAEの辞書では「Sentir estima o afecto en grado sumo por alguien.(誰かに最高度の敬愛・愛情を感じる)」という語義が載っています。
ただし実際の会話では、その大げさな響きゆえにやや甘い・くだけた表現として使われることが多く、恋人だけでなく親友に向けて言うこともあります。英語の I adore you に近い感覚です。
3. ”Me gustas.”(あなたに惹かれている)
これは要注意の表現です。gustar は「好みに合う」という動詞で、Me gusta el café.(コーヒーが好き)のようにモノに対して使うのが基本形。
しかし目的語が人になると、意味が一気に恋愛寄りに振れます。
まさにそこ、初学者がやりがちな事故です!”Me gustas.” はほぼ確実に「あなたに恋愛的に惹かれている」と受け取られます。
「人として好き・気が合う」と言いたいときは、”Me caes bien.”という別の表現を使いましょう。ここは必ずセットで覚えてくださいね!
【使い分け】
・Me gustas.
(あなたのことが好きです。=恋愛感情の告白)
・Me caes bien.
(あなたって感じがいいね/気が合うね。=人として好ましい)
4. ”Te extraño.” / ”Te echo de menos.”(あなたが恋しい)
「会えなくて寂しい」を表す表現です。RAEの辞書では extrañar の語義として「Echar de menos a alguien o algo, sentir su falta.(誰か・何かがいないことを寂しく思う)」と記載されています。
この2つはおおよそ中南米では te extraño、スペインでは te echo de menos が好まれるとよく言われます。どちらも正しいスペイン語なので、まずは言いやすいほうから覚えて問題ありません。
ひとつだけ文法の注意を。”echar de menos” は、まるごとひとつの塊として覚えてください。
RAEは ”echar en falta” も正しい形として認めていますが、”echar a faltar” は誤りとしています。混ざりやすいので気をつけましょう!
5. ”Nos queremos.”(私たちは愛し合っている)
querer を再帰動詞の形にすると、「お互いに大切に思っている」という相互の意味になります。カップルの関係を説明するときによく登場する表現です。
【例文】
・Nos queremos mucho.
(私たちはとても愛し合っている。)
・Se aman desde hace veinte años.
(彼らは20年前から愛し合っている。)
発音と活用 | 「テキエロ」「テアモ」を正しく言うために
よく見ていますね!スペイン語では「qui」「que」の u は発音しません。これは「k」の音を作るためだけに置かれている文字なんです。
なので quiero=キエロ、te quiero=テ キエロとなります。カタカナで「テキエロ」と書かれることが多いのは、このためですよ!
・Te quiero. ⇒ テ キエロ
※qui の u は読みません。「クイエロ」ではない点に注意
・Te amo. ⇒ テ アモ
※スペイン語のaははっきり「ア」。実際の会話では「テアモ」と一続きに聞こえます
querer は不規則、amar は完全な規則動詞
最後に活用を確認しておきましょう。ここでも2つの動詞の性格の差が出ます。
querer は語幹の e が ie に変わる語幹母音変化動詞です。ただし「私たち」「君たち」の形だけは変化しないのが特徴で、活用表に並べると変化する部分がブーツのような形に見えることから、俗に「ブーツ動詞」とも呼ばれます。
querer 現在形の活用
・yo quiero(キエロ)
・tú quieres(キエレス)
・él/ella quiere(キエレ)
・nosotros queremos(ケレモス)※変化しない
・vosotros queréis(ケレイス)※変化しない
・ellos quieren(キエレン)※過去形(点過去)は quise となり、これも不規則です
一方の amar は、-ar 動詞の完全な規則活用。RAEの辞書でも規則動詞のお手本として扱われています。
amar 現在形の活用
・yo amo(アモ)
・tú amas(アマス)
・él/ella ama(アマ)
・nosotros amamos(アマモス)
・vosotros amáis(アマイス)
・ellos aman(アマン)
まさにその通りです!querer は使われすぎて形が崩れ、amar はきれいな形のまま残った。
活用の形そのものが、「querer=日常語、amar=特別な語」という関係を裏づけてくれているわけですね。面白いですよね!
使い分けの実践 | 場面別の早見表
ここまでの内容を、実際の場面に落とし込んでみましょう。
シチュエーション別・どちらを使う?
●母親に電話を切るとき
⇒ Te quiero, mamá.(愛してるよ、お母さん)
※コロンビアやチリなど te amo が比較的多い地域もありますが、迷えば te quiero で安全
●仲のいい友人に感謝を伝えるとき
⇒ Te quiero mucho, amigo.(本当にありがとう、大好きだよ)
※ここで te amo を使うと関係を誤解させる可能性あり
●付き合いはじめの恋人に
⇒ Te quiero.(好きだよ)
※te amo は関係が深まってからのほうが自然
●結婚式の誓い、人生をかけた告白
⇒ Te amo.(愛しています)
※ここは te amo の独壇場
●気になる人に告白したいとき
⇒ Me gustas.(あなたのことが好きです)
※関係が始まる前の段階ではこちらが自然
その通りです、それが一番の近道です!
そして te amo は、自分から使うより先に「相手が言ったときの重み」を受け取れるようになることを目指しましょう。
スペイン語圏の映画やドラマを見るとき、登場人物が te quiero と te amo をどう使い分けているかに注目してみてください。教科書より雄弁に境界線を教えてくれますよ!
ただし一点だけ。脚本は「書かれた言葉」ですから、ドラマの中の te amo は実際の会話より多めに出てきます。そのつもりで観てくださいね!
te quiero と te amo の違い まとめ
以下、今回のポイントのまとめです。
●te quiero=動詞 querer(ラテン語 quaerere「探す・求める」由来)
⇒「望む・欲する」と「愛情を持つ」の2つの意味を持つ多義語
⇒家族・友人・恋人・ペットまで、大切な相手すべてに使える日常語
⇒相手が人のときは前置詞 a が必要(Quiero a mi madre.)
●te amo=動詞 amar(ラテン語 amare 由来。amor / amigo と同族)
⇒語義は実質「愛を抱く」の一点(2つ目の「望む」は p. us.=あまり使わない)
⇒恋愛の告白・結婚式・詩・歌詞など、場面が限られる特別な言葉
●辞書から言えること
⇒「te quiero=軽い」は誤解。強さの目盛りではなく使える範囲の違い
⇒2つの動詞は「望む」と「愛する」を逆の重みで持つ鏡写しの関係
⇒ただしRAEが「どちらが深い愛か」を判定したことはありません。辞書が示すのは意味の範囲までです
●データから言えること(CREA 1975〜2004)
⇒どの国でも te quiero のほうが多い
⇒スペインとメキシコはほぼ同率。「メキシコは te amo をよく使う」という通説は支持できない
⇒最大の分かれ目は国ではなく話し言葉か書き言葉か(会話では約19対1)
●迷ったときの指針
⇒初学者は te quiero を選べばまず失敗しない
⇒te amo はまず「読む・聴く」ための言葉として覚えるのが実用的
お疲れさまでした!
te quiero と te amo は、単語の意味というより「その言葉を口にする文化」ごと理解する必要がある表現です。だからこそ、学ぶ価値がありますよね。
日本語では照れくさくて言えないことも、スペイン語なら案外すんなり言えたりするものですよ。ぜひ大切な人に使ってみてくださいね!
「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española(querer / amar / adorar / extrañar の各項目)https://dle.rae.es/」
「Real Academia Española, CREA(Corpus de Referencia del Español Actual, 1975〜2004)※国別・媒体別の te quiero / te amo 出現比 https://corpus.rae.es/creanet.html」
「Real Academia Española, Diccionario panhispánico de dudas(a / echar / querer の各項目)https://www.rae.es/dpd/」
「Real Academia Española, Nueva gramática de la lengua española(querer+不定詞の項)https://www.rae.es/gramatica/」
「Paola Celi(2015)¿Querer o amar?, Castellano Actual, Universidad de Piura https://www.udep.edu.pe/castellanoactual/querer-o-amar/」
「Etimologías de Chile(querer / amar の項目)http://etimologias.dechile.net/」
「Online Etymology Dictionary(query / quest の項目)https://www.etymonline.com/」