どちらも日本語では「〜だ」「〜にある」にあたる、三人称(彼・彼女・それ)の形ですね。人のことも物のことも、スペイン語で説明しようとした瞬間に必ず選ばされる2つです。
そしてこの記事の主役は「場所」。実はスペイン語には、場所を言っているのに está ではなく es を使う場面があるんです。
大丈夫、裏切りではなくちゃんと理由があるルールです!
しかもこの線引きは、日本語で考えるとむしろ自然に感じられるタイプのものなんですよ。順番に見ていきましょう!
esとestáの違いを一行でつかむ
まずは土台を固めます。es は ser の三人称単数形、está は estar の三人称単数形です。
esとestáの基本分担
es ⇒ 「それが何であるか」を言う(分類・属性)
・Ana es enfermera.(アナは看護師だ。)
está ⇒ 「それが今どうなっているか」を言う(所在・状態)
・Ana está en el hospital.(アナは病院にいる。)
・La sopa está caliente.(スープは熱くなっている。)
RAE(スペイン王立アカデミー)の辞書でも、ser の第一義は「主語について、属性が意味することを断言するために用いる」、estar は「人や物について、この場所・あの場所、状況、現在のあり方に存在する・見出される」と書き分けられています。
esが担当する5つの場面:「これは何か」を言う
es が出てくるのは、その人・その物の「正体」や「性質」を言い切るときです。5つに分けて見ていきましょう。
1. 身分・職業・正体
・Mi vecino es abogado.
(隣人は弁護士だ。)
・Ese señor es el director del colegio.
(あの男性が校長だ。)
・Esto es un diccionario, no una novela.
(これは辞書だ、小説ではない。)
2. 見た目・性質・評価
・Mi hermana es rubia.
(姉は金髪だ。)
・Este barrio es muy ruidoso.
(この地区はとても騒がしい。)
・El examen es difícil.
(その試験は難しい。=試験の性質としてそういうもの)
3. 素材・所有・出身
「〜でできている」「〜のものだ」「〜出身だ」は、いずれも es de 〜 の形で言います。
・La mesa es de madera.
(そのテーブルは木製だ。)
・Este coche es de mi tío.
(この車は叔父のものだ。)
・Antonio es de Madrid.
(アントニオはマドリード出身だ。※RAE辞書の例文)
RAEの辞書には、ser の語義として「所有の関係を示す(Indica relación de posesión)」という項目があり、Este jardín es DE la reina(この庭は女王のものだ)という例が載っています。
「誰のもの?」「何でできてる?」「どこ出身?」は全部 ser の縄張りです!
4. 時刻・曜日・日付
・Son las tres.
(3時です。※RAE辞書の例文)
・Hoy es jueves.
(今日は木曜です。)
・Mañana es mi cumpleaños.
(明日は私の誕生日です。)
最高の疑問です!
そう、「一時的なら estar」という説明では、この時刻の言い方が説明できないんですよね。
実際にはこれ、「今は〈3時〉という時刻である」=今を分類しているんです。時間が経つかどうかではなく、「何であるか」を言っているから ser。ここが本質ですよ!
5. 値段の「相場」
「いくらですか」も ser で聞けます。RAEの辞書には ser の語義として「値する、費用がかかる(Valer, costar)」があり、¿A cómo es la merluza?(メルルーサはいくら?)という例が挙がっています。
ただし——ここは está でも言える、面白い場所です。後ろの章で詳しく扱いますね。
estáが担当する3つの場面:「今どうなっているか」を言う
1. 所在(〜にある・〜にいる)
人や物が今どこにあるか。これは está の最も基本的な仕事です。
・El director está en su despacho.
(部長は執務室にいる。)
・El perro estaba bajo la mesa.
(犬はテーブルの下にいた。)
・Las llaves están en el cajón.
(鍵は引き出しの中にある。)
・El museo está al lado del río.
(美術館は川のそばにある。)
2. 状態(〜になっている)
とくに「何かが起きた結果、今そうなっている」ものは está です。
・La puerta está abierta.
(ドアが開いている。)
・El café está frío.
(コーヒーが冷めている。)
・El jarrón está roto.
(その花瓶は割れている。)
・La tienda está cerrada los domingos.
(その店は日曜は閉まっている。)
3つめの El jarrón está roto は、RAEの誤用辞典が「estar としか組み合わせられない形容詞の例」として挙げているものです。
辞典には「El jarrón está roto と言い、*El jarrón es roto とは言わない」とはっきり書かれています。
roto(壊れた)は「壊れる」という出来事の結果。だから状態担当の estar しか受け付けないんですね。
3. 進行中の動作(〜しているところだ)
estar は動詞の -ando / -iendo 形と組んで、進行中の動作を作ります。
・El niño está durmiendo.
(その子は眠っている。※RAE辞書の例文)
・Mi jefe está hablando por teléfono.
(上司は電話中です。)
最難関:場所なのに ser を使う「出来事の開催場所」
さあ、いよいよこの記事の本丸です!
「場所は estar」と覚えた人が、必ず一度は転ぶのがここ。
物や人の所在は estar。でも、出来事が開かれる場所は ser。
ものの所在は está、出来事の開催は es
まずは並べて見比べてみてください。同じ「私の家」なのに、動詞が入れ替わります。
同じ場所、違う動詞
・La mesa está en mi casa.
「そのテーブルは私の家にある」
⇒ テーブルは「物」なので、所在=estar
・La fiesta es en mi casa.
「そのパーティーは私の家で開かれる」
⇒ パーティーは「出来事」なので、開催=ser
まさにそこです!素晴らしい気づきですね。
日本語でも「テーブルが家にある」と「パーティーが家で行われる」は、動詞そのものが違いますよね。
スペイン語も同じで、出来事の場合は「そこに置いてある」のではなく「そこで発生する」。だから所在の estar ではなく、ser が使われるんです。
これは俗説ではなく、辞書に明記されているルールです。RAEの辞書は ser の語義の一つとして「起こる、生じる、催される(Suceder, acontecer, tener lugar)」を立てており、例文として次の2つを挙げています。
¿Dónde fue la boda?
(結婚式はどこで行われたの?)El partido fue a las seis.
(試合は6時にあった。)※出典「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española, s.v. ser」
また、スペイン語英語辞典 WordReference でも ser の語義「efectuarse, suceder(実施される・起こる)」の例文として La fiesta será el sábado en mi casa.(パーティーは土曜に私の家で行われる。)が挙げられています。
「出来事」に当たる名詞のリスト
では、どんな単語が来たら ser なのか。「開催される/行われる」と日本語で言えるものだと考えてください。
場所を言うのに ser を使う名詞たち
la fiesta(パーティー)/ la boda(結婚式)/ la reunión(会議)
el concierto(コンサート)/ el partido(試合)/ la clase(授業)
el examen(試験)/ la conferencia(講演)/ la manifestación(デモ)
el funeral(葬儀)/ la entrevista(面接)/ el congreso(学会)
⇒ いずれも「時間の中で起きること」。物ではないので置き場所がない。
出来事の開催場所を言う例文
・La reunión es en la sala 3.
(会議は3号室で行われます。)
・El concierto es a las ocho en el Auditorio Nacional.
(コンサートは8時にアウディトリオ・ナシオナルであります。)
・El examen final será en el aula 12.
(期末試験は12番教室で行われます。)
・La entrevista fue en la oficina central.
(面接は本社で行われた。)
決定版:¿Dónde es la clase? と ¿Dónde está la clase?
この違いを一番きれいに見せてくれるのが、clase(授業/教室)という単語です。
なんと動詞を変えるだけで、聞いている内容が変わってしまうんですよ!
同じ単語、動詞で意味が変わる
・¿Dónde es la clase?
「授業はどこであるの?」
⇒ 授業という出来事の会場を聞いている
⇒ 答え:Es en el segundo piso.(2階であります)
・¿Dónde está la clase?
「その教室はどこにあるの?」
⇒ 教室という建物の一部の所在を聞いている
⇒ 答え:Está al final del pasillo.(廊下の突き当たりです)
その通りです!
建物と催しの両方を指せる単語(clase、conferencia、cine など)では、この使い分けが実際に会話でものを言います。
迷ったら、頭の中で「〜が行われる」と言い換えられるかを試してみてください。言い換えられるなら es、言い換えると変なら está です!
値段は es でも está でも言える
もう一つ、esとestáが両方使える面白い場所があります。それが値段です。
RAEの辞書を引くと、ser には「値する、費用がかかる」という語義があり ¿A cómo es la merluza? が例文に。一方 estar には「物について、市場で一定の価格である(Dicho de una cosa: Tener un determinado precio en el mercado)」という語義があり、¿A cuánto están las patatas?(じゃがいもはいくら?)が例文に挙げられています。
値段の2つの言い方
・¿Cuánto es?(おいくらですか?)
⇒ レジで合計金額を聞くときの定番。確定した「その値段である」
・Los tomates están a un euro el kilo.(トマトは1キロ1ユーロだ。)
⇒ 市場の相場。今週はこの値段、来週は変わるかもしれない
RAEの誤用辞典にも「商品の価格を表すには、補語を a または en で導くことができる」として Los tomates están a un euro el kilo、La casa está en 25 millones という例が挙げられています。
そのイメージでばっちりです!
とはいえ初学者のうちは、レジで使う ¿Cuánto es? だけ覚えておけば十分。está のほうは「市場で聞いたら出てくる言い方」くらいに頭の隅に置いておきましょう!
es / está 見分けチェックリスト
実際に文を作るときは、上から順にこの3つを試してみてください。
手順①:うしろに名詞が来る?
⇒ 来るなら迷わず es。(Es abogado. / Es un diccionario.)
手順②:主語は「出来事」?
⇒ fiesta / boda / reunión / clase など、「行われる」と言える主語なら es。
⇒ 物や人が主語で「〜にある・いる」なら está。
手順③:日本語にすると「〜ている」になる?
⇒ 開いている、冷めている、壊れている、寝ている ⇒ está。
⇒ 「〜だ」で終わるなら es。
esとestáの違いまとめ
以下、この記事の内容のまとめです。
●es=「それが何であるか」を言い切る動詞
⇒ 職業・正体・性質・素材・所有・出身・時刻・曜日
⇒ うしろに名詞が来たら必ず es
●está=「それが今どうなっているか」を言う動詞
⇒ 所在・状態・進行中の動作
⇒ 日本語で「〜ている」になるものはほぼ está
●最重要ポイント:場所の言い方が2つに割れる
⇒ 物・人の所在は está(La mesa está en mi casa.)
⇒ 出来事の開催場所は es(La fiesta es en mi casa.)
⇒ ¿Dónde es la clase?(授業はどこ?)/ ¿Dónde está la clase?(教室はどこ?)
●値段はどちらもあり
⇒ ¿Cuánto es?(お会計は?)/ Los tomates están a un euro el kilo.(相場は?)
「場所なら estar」という覚え方は、7割は正しくて3割は危ないルールでした。
正確には「物が置かれている場所は estar、出来事が起きる場所は ser」。
この一線さえ引けていれば、スペイン語圏で予定を聞かれても、道を聞かれても、ちゃんと噛み合った会話ができますよ!
ser と estar の全体像をひととおり押さえたい方は、下の総まとめ記事もあわせてどうぞ!
「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española(https://dle.rae.es/ser / https://dle.rae.es/estar)」
「Real Academia Española y ASALE, Diccionario panhispánico de dudas, 2.ª ed.(https://www.rae.es/dpd/estar / https://www.rae.es/dpd/ser)」
「WordReference Spanish-English Dictionary(https://www.wordreference.com/)」