読み方は「アイ・ノス・ビドリオス」。意味はとてもシンプルで、「じゃあね」「またね」です。
ただし、この vidrios という単語、辞書を引くと「ガラス」と出てきます。別れのあいさつなのに、なぜガラスなのか。ここが今日の面白いところですよ!
”ahí nos vidrios”の意味 | 中身は「またね」、ガラスは一切関係なし
”ahí nos vidrios(発音:[a.ˈi nos ˈbi.ðɾjos]/アイ・ノス・ビドリオス)”は、「じゃあね」「またね」「また今度」にあたる、くだけた別れのあいさつです。
意味の中身は、スペイン語圏でごく普通に使われる ”ahí nos vemos”(そこでまた会おうね = じゃあね) とまったく同じです。
その反応で大正解です!実は、意味を考えても永遠に答えは出ません。
これ、日本語で言う「駄洒落」なんです。vemos(ベモス)を、音がそっくりなだけの vidrios(ビドリオス) にすり替えて遊んでいるだけ。「布団が吹っ飛んだ」の布団に深い意味がないのと、まったく同じ理屈ですよ!
この表現は俗語(スラング)ではありますが、きちんとした辞書にも見出しとして載っています。
スペイン語圏22の言語アカデミーが共同でまとめた『Diccionario de americanismos(アメリカ大陸スペイン語辞典)』には、vidrio の項目の中に次のように登録されています。
vidrio
ahí nos ~s. fórm. Mx, Gu, Ho, Ni, CR, Co, Ec, Pe, Bo. juv. Se usa como despedida. fest. (nos vidrios).日本語訳:ahí nos vidrios(=あの「~s」の部分が vidrios)。あいさつ表現。メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアで使用。若者言葉。別れのあいさつとして使う。おどけた言い方。(短縮形:nos vidrios)
※参考・引用「Asociación de Academias de la Lengua Española, Diccionario de americanismos, «vidrio»」
辞書に付いている記号が、この表現の性格をそのまま教えてくれています!
fórm.=決まり文句(あいさつ表現)
juv.=若者言葉
fest.=おどけた・ふざけた言い方
「若者が使う、ふざけた別れのあいさつ」。これ以上ないくらい正確な要約ですね!
”ahí nos vidrios” 早わかり
●意味 ⇒ 「じゃあね」「またね」(= ahí nos vemos と同じ)
●読み方 ⇒ アイ・ノス・ビドリオス
●正体 ⇒ vemos を、音の似た vidrios(ガラス)に置き換えた駄洒落
●ガラスとの意味的なつながり ⇒ ゼロ
●使う人 ⇒ 主に若者・友達どうし/メキシコを中心に中南米の広い範囲
●目上・仕事の場 ⇒ 使わない
読み方のコツ |「ビドリオス」はカタカナ5文字でも、スペイン語では2拍
カタカナで「アイ・ノス・ビドリオス」と書くと、なんだかとても長い呪文のように見えます。ですが実際に口に出すときは、思っているよりずっと短くて速いです。
・ahí = a-í(2音節)
「アイ」とひとまとまりに聞こえますが、強く読むのは後ろの「イ」です。「アイ↑」と後ろ上がりに。
※ i にアクセント記号が付いているのは、この a と i が「ひとつの母音のかたまり(二重母音)」ではなく、別々に分かれて読まれることを示すためです。
・nos = nos(1音節)
「ノス」。ここは軽く、すべらせるように。
・vidrios = vi-drios(2音節)
強く読むのは先頭の「ビ」。drios はこれでひとかたまりで、「ド・リ・オ・ス」と4つに割らずに「ドゥリオス」と一息で言い切ります。
※スペイン語の v は英語の v(下唇を噛む音)ではなく、b に近い音です。「ヴィドリオス」ではなく「ビドリオス」。
そこが一番のポイントです!
そして実は、この「2拍で言い切る」という点こそが、駄洒落が成立している理由でもあるんです。次の章で、元ネタの ahí nos vemos と並べてみましょう!
元ネタは ”ahí nos vemos” | まず本家のほうを分解しておく
駄洒落を理解するには、まず「元の言葉」を知らないといけません。ここで ”ahí nos vemos” を3つのパーツに分けておきましょう。
ahí + nos + vemos
ahí(アイ)⇒「そこで」「そのときに」
nos(ノス)⇒「私たちが、お互いを」
vemos(ベモス)⇒ ver(見る・会う)の「私たちが〜する」の形
⇒ 直訳すると「そこで私たちはお互いに会う」 ⇒ 「じゃあまたね」
「そこで」って言われても、実際にはどこも指してないんだよね?なんか変な感じがするな。
私も最初その感覚に戸惑いました!ahíって辞書だと「そこ」という場所を指す言葉なのに、実際の会話では特定の場所と関係なく使われているから、直訳を頭に置いたまま聞くとずっと違和感が抜けなかったんです。決まり文句として音ごと覚えるようにしてから、やっとすんなり使えるようになりました。
ahí は「そこ」だけど、実際には場所を指していない
ahí は基本的に「そこ、そこで」を表す指示副詞です。ただし、スペイン王立アカデミー(RAE)の『Diccionario de la lengua española(DLE)』を見ると、場所以外の使い方もきちんと登録されています。
ahí(De a-1 y el ant. hi, y ‘en tal lugar’.)
adv. dem. En ese lugar. María vive ahí.
adv. dem. En eso o en esto, en ese punto o en esa cuestión. Volvieron a verse al cabo de diez años y ahí empezó todo.
adv. dem. entonces (‖ ese tiempo). De ahí en adelante cambiaron su actitud.日本語訳:ahí(a- と古語 hi「そのような場所に」から)/(指示副詞)その場所に。例:マリアはそこに住んでいる。/(指示副詞)その点で、その件で。例:10年ぶりに再会し、そこからすべてが始まった。/(指示副詞)entonces(そのとき)。例:それ以降、彼らは態度を変えた。
※参考・引用「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española, «ahí»」
辞書にもある通り、ahí には「そのとき」という時間寄りの使い方があります。
あいさつの ahí nos vemos の ahí も、地図上のどこかを指しているわけではありません。「そのうち、どこかのタイミングで」くらいの、ぼんやりした指差しなんです。
日本語の「じゃ、また」の「また」も、いつなのか一切言っていませんよね。あれと同じ感覚ですよ!
nos vemos は「私たちがお互いを見る」=「会う」
nos は「私たちを・私たちに」を表す代名詞です。ここでは主語(私たち)と目的語(私たち)が同じものを指していて、こういう使い方を相互の用法と呼びます。RAEとスペイン語圏各国のアカデミーがまとめた『Nueva gramática de la lengua española』でも、複数形の nos/os/se が「お互いに」を表す用法として整理されています。
また、形は現在形の vemos ですが、指しているのはこれから先のことです。スペイン語の現在形には「これから起きる予定」を表す使い方があり、nos vemos はその代表例と言えます。
本家 ”ahí nos vemos” の例文
・Bueno, ya me voy. ¡Ahí nos vemos!
(じゃ、もう行くね。またね!)
・Ahí nos vemos el viernes.
(じゃあ、金曜にね。)
・—¿Vas a la fiesta? —Sí, ahí nos vemos.
(「パーティー行く?」「うん、じゃあ現地でね。」)
この nos vemos という言い方そのもの(なぜ現在形なのに「また会おうね」になるのか、hasta luego とどう違うのか)については、nos vemos(ノスベモス)の意味と使い方をまとめた記事で詳しく解説しています。今日の駄洒落の「元ネタ」にあたる部分なので、あわせて読むと理解が一段深くなりますよ。
”ahí nos vemos” と ”ahí nos vidrios” の違い | 意味は同じ、キャラが違う
いい質問です!「伝わる内容」は完全に同じ、違うのは「キャラ」と「使える場所」だと考えてください。
日本語で言うと、「またね」と「あばよ」くらいの差です。どちらも別れのあいさつですが、後者を会社の役員に言う人はいませんよね!
まず、なぜ vemos が vidrios になったのか
この2つの単語を並べてみると、駄洒落として非常によくできていることが分かります。
vemos と vidrios の“そっくり度”
vemos vidrios
音節の数 2(ve-mos) 2(vi-drios)
強く読む場所 前(VE-mos) 前(VI-drios)
出だしの音 b の音 b の音
終わりの音 -os -os
⇒ 長さ・リズム・出だし・語尾が全部そろっている
⇒ だから会話の流れに違和感なくハマり、それでいて「あれ、いま違う単語言った?」と気づける
駄洒落が成立する条件って、実は結構シビアなんです。
音が違いすぎると「ただの言い間違い」になり、音が近すぎると「気づかれない」。vemos と vidrios は、ギリギリ気づけるくらい似ているという絶妙な位置にいるんですよ!
文法で考えると「デタラメ」、でもそれが正解
ここで初学者の方がよくハマる落とし穴を先に潰しておきます。
”nos vidrios” を文法的に解析しようとしてはいけません。なぜなら、そもそも文として成立していないからです。
・vemos は動詞(ver の活用形)
⇒ だから nos(お互いを)という目的語を受け取れる
・vidrios は名詞の複数形(ガラス)
⇒ 名詞なので、nos を受け取ることができない
⇒ 「nos + 名詞」という並びは、スペイン語の文法では説明がつかない
⇒ つまり ”nos vidrios” は、意味の上でも文法の上でも中身が空っぽ。音だけを借りてきた“ガワ”なのです。
日本語で考えると分かりやすいですよ。
子どもの頃に言った「さいなら三角、また来て四角」。あの「三角」に意味はありませんし、文法的にもめちゃくちゃですよね。でも、みんな「さようなら」の意味だと分かる。
ahí nos vidrios は、まさにこのポジションの言葉です!
使い分けの一覧
意味が同じである以上、判断基準は「相手」と「場面」だけになります。
ahí nos vemos / ahí nos vidrios 使い分け
●ahí nos vemos
⇒ ふつうの「またね」。ほぼ誰にでも使える
⇒ 友達、同僚、店員さん、近所の人、教室の先生でもOK
⇒ スペイン語圏ならどこでも通じる
●ahí nos vidrios
⇒ ふざけた「じゃあな」。友達・同世代・冗談が通じる相手だけ
⇒ 初対面、目上、仕事の場、メールや書類では使わない
⇒ 通じる地域はメキシコを中心とした中南米(スペインでは通じないことが多い)
⇒ 真顔ではなく、ちょっと笑いながら言う言葉
”ahí nos vidrios” の例文
・Ya me tengo que ir. ¡Ahí nos vidrios!
(もう行かなきゃ。じゃあな!)
・—Mañana te marco. —Va, ahí nos vidrios.
(「明日電話するね」「オッケー、じゃあまた」)
・Bueno, banda, ahí nos vidrios.
(それじゃみんな、また今度な。)※ banda はメキシコの若者言葉で「仲間たち、みんな」。この表現とは相性抜群です。
友達にしか使えない言葉なんだね、気をつけないと。
実は私、学習を始めたばかりの頃に一度やらかしています!お世話になっていた大学の先生に、軽いノリで「ahí nos vidrios!」って言ってしまって、苦笑いされたことがあるんです(笑)。友達言葉と丁寧な言葉の境目は、慣れるまで本当に見えにくいんですよね。
先ほどの辞書の記載をもう一度思い出してください。「nos vidrios」という短縮形も、ちゃんと辞書に登録されていましたよね。
つまり ahí を落として ”Nos vidrios.” だけでも成立します。日本語で「じゃあね」を「じゃ!」で済ませるのと同じ感覚ですよ!
なぜ、よりによって ”vidrio(ガラス)” が選ばれたのか
気持ちはすごく分かります。でも答えは「特にない」です!
「布団が吹っ飛んだ」の布団に、寝具としての意味が込められていないのと同じ。たまたま音がハマる身近な単語だったから採用された、それだけなんですよ。
とはいえ、駄洒落の“材料”として使われた vidrio という単語自体は、普通の生活単語としてとても役に立ちます。せっかくなので、ここで正体を確認しておきましょう。
vidrio(Del lat. vitreum ‘objeto de vidrio’, der. de vitrum ‘vidrio’.)
m. Material duro, frágil y transparente o traslúcido, sin estructura cristalina, obtenido por la fusión de arena silícea con potasa y moldeable a altas temperaturas.
m. Lámina de vidrio que se utiliza en ventanas, puertas, etc.
m. Cosa muy delicada y quebradiza.
m. Persona de genio muy delicado y que fácilmente se desazona y enoja.日本語訳:vidrio(ラテン語 vitreum「ガラス製品」に由来。さらに vitrum「ガラス」の派生語)/(男性名詞)硬く、もろく、透明または半透明の物質。珪砂とカリを溶かして作られ、高温で成形できる。/窓や扉などに使われるガラス板。/非常にもろく壊れやすいもの。/すぐ気を悪くして怒る、気難しい人。
※参考・引用「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española, «vidrio»」
実は日本語にも入っている単語「ビードロ」
ここでちょっと嬉しい発見があります。
ラテン語の vitrum(ガラス) から生まれた単語は、スペイン語では vidrio、お隣のポルトガル語では vidro という形になりました。そしてこのポルトガル語の vidro は、江戸時代の日本に入ってきて「ビードロ」という日本語になっています。
息を吹き込むと「ポッペン」と鳴る、あのガラスのおもちゃ「ビードロ」です!
つまり vidrio は、日本語話者にとって“実はもう知っている単語”なんですね。ビードロ=ガラス、と結びつけておけば、もう二度と忘れませんよ!
ついでの注意:メキシコには ”echar vidrio” という別表現もある
ひとつだけ、混同しやすいものを潰しておきます。
メキシコには ”echar vidrio” という口語表現があり、こちらは「見る、じろじろ見る、様子をうかがう」という意味です。『Diccionario del español de México(メキシコスペイン語辞典)』にも登録されています。
vidrio
Echar vidrio (Popular) Echar ojo, mirar, observar日本語訳:echar vidrio(俗語)目をやる、見る、観察する
※参考・引用「El Colegio de México, Diccionario del español de México, «vidrio»」
同じ vidrio を使っていますが、ahí nos vidrios とは何の関係もありません!
こちらは「ガラス(=レンズ、目)越しに見る」というイメージから来た、意味のつながりがある表現。一方の ahí nos vidrios は音だけ。同じ単語でも、成り立ちがまったく別物なんです。
仲間がいる!メキシコの「音でズラす」言葉たち
ahí nos vidrios は、決してひとりぼっちの変わり者ではありません。メキシコのくだけた話し方には、「意味は変えず、音だけ別の単語にすり替える」という遊びがたくさんあります。
しかも、そのうちのいくつかはきちんと辞書に載っているほど定着しています。
simón.
adv. Mx, Gu, Ho, ES, Ni, Ec, Bo. juv. Sí.日本語訳:simón(副詞)メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、エクアドル、ボリビアで使用。若者言葉。「はい、うん」。
※参考・引用「Asociación de Academias de la Lengua Española, Diccionario de americanismos, «simón»」
nel.
adv. Mx; Gu, Ho, ES, Ni, CR, juv; Pe, p.u; urb. No, nada, de ninguna manera. pop. (neles; neli). ◆ nel pastel; nelson.
~ pastel. loc. adv. Mx, Gu; Ho, Ni, CR, juv. nel, no.日本語訳:nel(副詞)メキシコほか。若者言葉・都市部の俗語。「いや、ぜんぜん、とんでもない」。(変形:neles/neli)関連:nel pastel、nelson。/nel pastel(副詞句)= nel、「いや」。
※参考・引用「Asociación de Academias de la Lengua Española, Diccionario de americanismos, «nel»」
見えてきましたか?やっていることは全部同じです!
sí(はい)→ 音を伸ばして人名のSimón(シモン)に
no(いいえ)→ nel に崩し、さらに nel pastel(ケーキ)や nelson へ
vemos(会おう)→ vidrios(ガラス)に
どれも意味は元のまま、音だけ着替えさせるという同じ遊びなんですよ!
“音だけ着替え”シリーズ 早見表
●sí(はい)⇒ simón(人名シモン)
●no(いいえ)⇒ nel ⇒ nel pastel(ケーキ)/nelson
●ahí nos vemos(またね)⇒ ahí nos vidrios(ガラス)⇒ 短縮して nos vidrios
⇒ 共通するのは「意味はそのまま、音だけ別の単語に乗り換える」
⇒ 日本語の「あざーす」のような“短縮”ではなく、「さいなら三角、また来て四角」のような“言葉遊びで伸ばす”タイプ
ちなみに ahí nos vidrios のあとに、さらに ”cristales”(クリスタル) と足して「Ahí nos vidrios, cristales.」と言う人もいます。ガラス→クリスタルで、駄洒落を二段重ねにしているわけですね!
ただしこれは辞書に登録がある形ではないので、「聞いたら分かる」で十分です。無理に覚えなくて大丈夫ですよ。
使うときの注意点 | まずは「聞いて分かる」を目標に
1. 相手を選ぶ(これが一番大事)
辞書が juv.(若者言葉)・fest.(おどけた言い方)と明記している通り、これはくだけた冗談の言葉です。
目上の人、初対面の人、仕事の相手、お店やホテルのスタッフに使うのは避けましょう。日本語で初対面の人に「あばよ!」と言わないのと同じ判断です。
そうした場面では、素直に ”Hasta luego.” を使えば間違いありません。この hasta luego の成り立ち(なぜ直訳が「後でまで」になるのか、adiós との重さの違い)については、hasta luego(アスタルエゴ)の意味と使い方をまとめた記事で詳しく解説しています。フォーマルな場面の基本形なので、先に押さえておくと安心です。
2. 地域を選ぶ
辞書に挙がっている使用国はメキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア。中心はメキシコです。
逆に言うと、スペイン本国やアルゼンチンなどでは通じない可能性が高いということ。「スペイン語圏ならどこでもウケる」と思って使うと、無反応で終わることがあります。
3. 書き言葉では使わない
これは完全に話し言葉の表現です。友達とのメッセージアプリならまだしも、メール・履歴書・レポート・ビジネス文書では絶対に登場しません。
4. 真顔で言わない
意外と見落とされがちですが、これは笑わせにいく言葉です。深刻な別れの場面や、しんみりした空気の中で真顔で言うと、かなり浮きます。
初学者の方への現実的なおすすめは、「まずは聞き取れるようになること」です。
というのも、知らないと本当に「ガラス」と言われたと思ってフリーズするんですよ。会話の最後に「ビドリオス」と聞こえたら「あ、またねって言われたんだな」と分かる。まずはそこがゴールでいいんです!
そのうえで、仲良くなった友達に一度使ってみると、たいてい笑ってもらえますよ。
”ahí nos vidrios” と言われたときの返し方
最後に、実際に言われたときにどう返すかを見ておきましょう。難しく考える必要はありません。「またね」と言われたときの返しと同じでOKです。
・Ahí nos vidrios. / Nos vidrios.
(そのまま返す。ノリに乗る、いちばん楽しい返し方)
・Va, ahí nos vemos.
(「オッケー、じゃあね」。ふつうの形で返しても、まったく失礼ではありません)
・Sale, cuídate.
(「じゃあね、気をつけて」。ひとこと気づかいを足すパターン)
駄洒落で言われたからといって、必ず駄洒落で返さなければいけないルールはありません!
ふつうに ”Ahí nos vemos.” と返しても何の問題もないので、そこは安心してくださいね。
ちなみに、最後に添えた cuídate(クイダテ) は「気をつけてね」という別れぎわのやさしい一言です。ふざけた ahí nos vidrios のあとにこれを足すと、おふざけと気づかいのバランスがちょうどよくなります。この cuídate の成り立ち(なぜ te が付くのか、ten cuidado との違い)については、cuídate(クイダテ)の意味と使い方をまとめた記事で詳しく解説しています。
いいですね!
別れのあいさつは「1個だけ覚える」より「組み合わせられる」ほうが断然強いんです。今日の ahí nos vidrios も、その引き出しの1つとして持っておいてくださいね!
30秒でわかる ahí nos vemos / ahí nos vidrios 診断
意味は同じ。違うのは「相手」と「地域」の2点だけです。
誰にでも使える、ふつうの「またね」。
ahí nos vidrios は通じない可能性が高い。
駄洒落の別れ言葉。ただし真顔ではなく、軽く笑いながら言うこと。
※ 迷ったら ahí nos vemos が常に正解です。ahí nos vidrios は「言われて分かればOK」で、自分から使うのは慣れてからで十分です。
”ahí nos vidrios”の意味・成り立ち・使い方のまとめ
以下、”ahí nos vidrios” についてのまとめです。
⇒読み方は「アイ・ノス・ビドリオス」。ahí は後ろの「イ」を強く、vidrios は先頭の「ビ」を強く、drios はひとかたまりで一息
●vidrio(ガラス)との意味的なつながりは一切ない
⇒ahí nos vemos の vemos を、音が似ているだけの vidrios にすり替えた駄洒落。「布団が吹っ飛んだ」と同じ発想
●そっくりな理由 ⇒ vemos も vidrios も2音節・前が強い・b の音で始まる・-os で終わる。長さもリズムも一致している
●文法で分解してはいけない ⇒ vidrios は名詞なので nos を受け取れず、”nos vidrios” は文として成立しない。日本語の「さいなら三角、また来て四角」と同じポジション
●ahí nos vemos との違い ⇒ 意味は完全に同じ。違うのは相手と場面。ahí nos vemos は誰にでも/ahí nos vidrios は友達・同世代・冗談が通じる相手だけ
●辞書の記載は fórm.(あいさつ表現)/juv.(若者言葉)/fest.(おどけた言い方)。使用国はメキシコを中心に中南米9か国(スペインでは通じにくい)
●短縮形 ”nos vidrios” も辞書に登録あり。「じゃ!」の感覚で使える
●vidrio の語源はラテン語 vitrum(ガラス)。同じ語源のポルトガル語 vidro が日本語の「ビードロ」になっている
●仲間の表現 ⇒ simón(sí=はい)、nel/nel pastel(no=いいえ)。どれも意味はそのまま、音だけ着替える言葉遊び
●注意 ⇒ 目上・初対面・仕事・書き言葉ではNG/真顔で言わない/まずは「聞いて分かる」がゴール
●返事 ⇒ そのまま ”Ahí nos vidrios.” でも、ふつうに ”Va, ahí nos vemos.” でもOK。”Sale, cuídate.” と気づかいを足すのもおすすめ
▶ 別れの挨拶ハブ記事「スペイン語の別れの挨拶まとめ」はこちら
「Asociación de Academias de la Lengua Española, Diccionario de americanismos, 2010(vidrio/simón/nel)」
「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española(vidrio/ahí)」
「El Colegio de México, Diccionario del español de México(vidrio)」
「Real Academia Española y Asociación de Academias de la Lengua Española, Nueva gramática de la lengua española(Los pronombres recíprocos)」
「Wikcionario, Wikcionario en español(ahí nos vidrios)」