メキシコの屋台で、タコスの次によく見かけるのがトウモロコシの屋台。ここに2つの形があります。
elote(エローテ)は穂軸についたまま、esquites(エスキーテス)は粒をカップに入れたもの。ただし、esquites は elote を刻んだだけのものではありません——ここが今日の面白いところですよ!
elote の意味は「若いトウモロコシの穂」
”elote(発音:エローテ)【男性名詞】”は、まだ実がやわらかく水分を含んでいる、若いトウモロコシの穂を意味する語です。
ここでいちばん大事なのは、maíz(マイス)との違いです。
”maíz”と”elote”の違い
●maíz=作物・穀物としてのトウモロコシ全般。乾いた粒も含む
⇒ トルティーヤやトルティージャチップスの原料になるのはこちら
●elote=まだ若くて水分を含んだ、穂軸についた状態のトウモロコシ
⇒ そのまま茹でたり焼いたりして食べられる状態
つまり elote は、トウモロコシという植物の名前ではなく、「今すぐ食べられる状態のトウモロコシ」を指す言葉なんですね。
そこがまさに文化の差が出るところです!
日本語でも、米・ごはん・稲は全部同じ植物ですよね。でも状態が違うから名前を分けている。主食にしている作物ほど、言葉が細かく分かれるんです。
メキシコにとってトウモロコシは、日本の米と同じ位置にあるということですよ!
屋台の elote は、日本の焼きとうもろこしとは味の方向が違う
ここで「elote = 焼きとうもろこし」と思って買うと、いい意味で裏切られます。
屋台の elote は、茹でた(または焼いた)穂軸に、串を刺してこう仕上げます。
屋台の elote の作り方
1. トウモロコシを茹でる(または炭火で焼く)
2. 串を刺す
3. mayonesa(マヨネーズ)を全体に塗る
4. queso(粉状のチーズ。cotija という塩気の強いチーズが定番)をまぶす
5. chile en polvo(チリパウダー)を振る
6. limón(ライム)を搾る
日本の焼きとうもろこしは、醤油の香ばしさと甘みで成り立っています。
メキシコの elote は、しょっぱい・酸っぱい・辛いが同時に来ます。甘さは、トウモロコシ自体の甘みだけです。
最初はみんなそう言うんですよ!
でも考えてみると、マヨネーズはコクと油分、チーズは塩気、チリは香り、ライムは酸味——ぜんぶ違う役割で、ケンカしていないんです。
甘いトウモロコシを塩と酸で引き締める、という設計ですね。屋台に行ったら、ぜひ一度試してほしい一品です!
esquites は「粒にした elote」ではなく、別の料理
さて、本題です。
esquites(エスキーテス)は、粒を穂軸から外してカップに入れ、スプーンで食べるものです。見た目は「elote をバラしたもの」に見えます。
でも、作り方が違います。
elote と esquites の違い
elote
⇒ 穂軸のまま茹でる・焼く ⇒ 上から塗る・まぶす ⇒ 手に持ってかじる
esquites
⇒ 粒を外してから、塩と epazote(エパソーテという香草)を入れて煮る
⇒ 煮汁ごとカップに入れる
⇒ マヨネーズ・チーズ・チリ・ライムを加えてスプーンで食べる
※ つまり esquites は「煮て味を含ませた」別料理。刻んだだけではない
ポイントは epazote(エパソーテ)です。メキシコ料理でよく使われる独特の香りを持つ香草で、粒を煮るときに一緒に入れます。だから esquites は、上に乗せた調味料だけでなく中まで味がついているんですね。
そして煮汁が残っているので、スープに近い感覚で食べます。カップの底に残った汁まで飲む人も多いくらいです。
よく気づきましたね、実際にあるんです!
elote en vaso(エローテ・エン・バソ/カップのエロテ)という呼び方があって、こちらは粒を茹でてカップに入れ、上から味付けしたものを指します。
地域によっては trolelote、vasolote、chaskas など、まだまだ別の呼び名があります。境目は店や地域でけっこう曖昧なので、迷ったら ¿Qué lleva?(何が入るの?)で聞いてしまうのが確実ですよ!
どちらもナワトル語から来た言葉
elote も esquites も、スペイン語がヨーロッパから持ち込んだ語ではありません。メキシコにもともとあった言葉が、スペイン語に取り込まれた語です。
elote / esquites の語源
elote
ナワトル語 elotl(若いトウモロコシの穂)
↓
スペイン語 elote
esquites
ナワトル語 izquitl(コマルという鉄板で煎ったもの)
↓
スペイン語 esquite(複数 esquites)
面白いのは izquitl のほうです。もともと「煎ったもの」という意味なので、今の esquites の作り方(煮る)とは、実はずれています。
実際、スペイン語の esquite には今でも「コマルで作った塩味のポップコーン」という意味が残っています。「煎ったトウモロコシ」という元の意味が、そちらに生きているわけですね。
ナワトル語から来たスペイン語は、実はもっとたくさんあります!
・chocolate(チョコレート)
・tomate(トマト)
・aguacate(アボカド)
・chile(唐辛子)
・tamal(タマル)
気づきましたか? 語尾が -te や -le で終わるものが多いんです。ナワトル語の -tl という語尾が、スペイン語で発音しやすい形に変わった跡なんですよ!
発音でつまずく2点
カタカナで覚えていると、そのままでは通じない可能性が高いのがこの2語です。
1. elote は「エロート」ではなく「エローテ」
日本語では、外来語の語尾の母音を落として発音する癖があります。でもスペイン語では語末の e を必ず発音します。
○ エローテ(e-LO-te) / × エロート
強く読むのは真ん中の lo です。「エローテ」と、真ん中を伸ばす感じで言うと近くなります。
2. esquites は「エスクイーテス」ではなく「エスキーテス」
これは英語の癖が邪魔をするパターンです。英語では qu を「クゥ」と読みます(quick、queen など)。
でもスペイン語では違います。qui は「キ」、que は「ケ」。u は書いてあっても読みません。
・esquites ⇒ エスキーテス(× エスクイーテス)
・queso(チーズ)⇒ ケソ(× クエソ)
・quiero(欲しい)⇒ キエロ(× クイエロ)
・¿Qué?(何?)⇒ ケ(× クエ)
※ qu の u は、常に読みません。「k の音を書くための飾り」だと思ってください
これ、本当によくある間違いなんです!
しかも queso は elote にも esquites にも乗る、屋台の必須単語。「ケソ」と読めるだけで、注文がぐっとスムーズになりますよ!
文法:el elote と los esquites
この2語は、冠詞と数の扱いに小さな癖があります。
冠詞と数のまとめ
●elote=男性名詞
単数 el elote / 複数 los elotes
●esquite=男性名詞。ただしこの料理を指すときは、ふつう複数形で使う
⇒ los esquites、un vaso de esquites(エスキーテス1カップ)
※ 屋台で「エスキーテス1個」と言うときも、中身は粒の集まりなので複数のままです
屋台での注文のしかた
実際に頼むときの言い方です。タコスと同じで、短い文で足ります。
elote / esquites を注文する
・Un elote, por favor.
(エロテ1本ください)
・Un vaso de esquites, por favor.
(エスキーテス1カップください)
・Dos elotes, por favor.
(エロテ2本ください)【味付けを調整する】
・Con todo, por favor.(全部つけてください)
・Sin chile, por favor.(チリ抜きでお願いします)
・Sin mayonesa.(マヨネーズ抜きで)
・Poquito chile.(チリは少しだけ)
・Con limón.(ライムをかけて)
乳製品を避けたい方は、queso(チーズ)と crema(サワークリーム)が入ることがある点に注意してください。¿Lleva queso?(チーズは入りますか)と確認できます。
「メキシカン・ストリートコーン」と覚えると外れる場面
最後にひとつだけ。
elote は、日本や英語圏では「メキシカン・ストリートコーン」という名前で紹介されることが多い料理です。でもelote という単語そのものは、料理名ではありません。
だから、こういう文に出会ったときに混乱します。
・Compré tres elotes en el mercado.
(市場でトウモロコシを3本買った)
※ ここではただの生のトウモロコシのこと。屋台料理ではない・Los elotes ya están listos para la cosecha.
(トウモロコシはもう収穫できる状態だ)
※ 畑の話。料理はまったく関係ない
語彙を覚えるときのコツをひとつ!
「料理名として覚えるか、材料名として覚えるか」を分けておくと、こういう混乱が起きません。
elote は材料の名前。屋台の一品を指すのは、あくまで文脈がそう言っているときだけ、ということですね!
elote と esquites の意味と違いのまとめ
⇒ 作物としての maíz とは別の語。料理名ではなく材料名
●esquites【ふつう複数】=粒を外し、塩と epazote で煮て、煮汁ごとカップに入れたもの
⇒ elote を刻んだだけのものではない。中まで味がついた別料理
●屋台の味付けはマヨネーズ・チーズ(cotija)・チリパウダー・ライム
⇒ 日本の醤油の香ばしさとは逆方向。しょっぱい・酸っぱい・辛いが同居する
●語源はどちらもナワトル語(elotl / izquitl)
●発音:エローテ(語末の e を読む)/エスキーテス(qui は「キ」。u は読まない)
トウモロコシの屋台が分かったら、隣のタコス屋台にも行ってみましょう!
「数+de+具の名前」という注文の型から、¿Con todo? への答え方まで、屋台のスペイン語をまとめた記事がありますよ。
「elote – Wikcionario(https://es.wiktionary.org/wiki/elote)」
「esquite – Wikcionario(https://es.wiktionary.org/wiki/esquite)」
「Elote – Wikipedia(https://es.wikipedia.org/wiki/Elote)」
「Esquites – Wikipedia(https://es.wikipedia.org/wiki/Esquites)」