タコスの注文でつまずく人には、ほぼ共通のパターンがあります。「すみません、パストールのタコスを3つ、全部乗せで、でも玉ねぎは抜いてください」を1文で組み立てようとして固まるんですね。
でも現地の屋台は、そんな長い文で動いていません。実際は「短い文の投げ合い」で進みます。ここを知っているだけで、初日から注文が通りますよ!
メキシコの屋台のスペイン語は「1文=1情報」で進む
まず、実際の屋台のやり取りを丸ごと見てしまいましょう。教科書の会話文よりずっと短いはずです。
タコス屋台の会話(まるごと)
自分:Tres de pastor, por favor.
(パストール3つください)店員:¿Con todo?
(全部乗せる?)自分:Sí, sin cebolla.
(はい、玉ねぎ抜きで)店員:¿Para aquí o para llevar?
(ここで食べる? 持ち帰り?)自分:Para llevar. Y la salsa aparte, por favor.
(持ち帰りで。あとサルサは別にしてください)
自分が言った文は、どれも3語から5語です。動詞が入っていない文まであります。
そして注文の中身は、この4往復で全部決まっています。
むしろ逆で、長い文を作ろうとするほど詰まります!
屋台の店員さんは、足りない情報を自分から聞いてくれます。だからこちらは「最初にひとこと言って、あとは聞かれたことに答える」だけでいいんですよ。
「聞かれる前提の注文」に慣れることが最大のポイント
ここが、日本の食事の注文と決定的に違うところです。
日本のお店では、注文は黙っていても完結します。メニューに写真と名前があり、「Aセット」と言えばAセットが出てくる。中身は最初から確定しているので、店員さんと相談する必要がありません。
メキシコの屋台は、そうなっていません。
「何を乗せるか」「ここで食べるか」「サルサは別にするか」を、その場で口頭で決めます。だから店員さんは必ず質問してきます。
メキシコの屋台で必ず聞かれる3つ
●¿Con todo?(全部乗せる?)
●¿Para aquí o para llevar?(ここで食べる? 持ち帰り?)
●¿Algo más?(他には?)
⇒ この3つに短く答えられれば、注文はほぼ終わります
そうなんです、そこが一番大事なところです!
聞き取れなくてパニックになるのではなく、「この3つのどれかが来る」と分かっていれば、聞き取れなくても当てられます。実際、現地では音が全部つながって聞こえるので、予測で補うのが普通ですよ。
注文の基本の型「数+de+具の名前」
では、最初のひとことをどう作るか。ここが一番の発見どころです。
正式に言えば「パストールのタコス3つ」は tres tacos de pastor です。
ところが屋台では、ほぼ確実にtacos が落ちます。
屋台の注文の型
tres tacos de pastor(正式な形)
↓ タコス屋なんだから tacos は言わなくても分かる
Tres de pastor.(実際に使う形)
⇒ 数詞+de+具の名前、これだけで注文が成立する
この形は、そのまま具を差し替えるだけで無限に応用できます。
- Uno de bistec.(ビステック1つ = 牛肉のタコス1つ)
- Dos de suadero.(スアデロ2つ = 牛の腹の部位のタコス2つ)
- Cuatro de pollo.(鶏4つ)
- Tres de pastor.(パストール3つ)
日本語でも同じことをやっていますよ!
ラーメン屋で「大盛りひとつ」と言うとき、わざわざ「ラーメンの大盛りをひとつください」とは言わないですよね。その場にあるものは、名前を省いても通じる——スペイン語の屋台もまったく同じ発想です!
丁寧にしたいときは por favor を足すだけ
Tres de pastor だけだとぶっきらぼうに感じる、という人もいると思います。安心してください。付け足すのは por favor の一語で十分です。
さらに柔らかくしたいときは、頭に動詞を足す方法もあります。
【頭に付ける言い方】
・¿Me da tres de pastor, por favor?
(パストール3つもらえますか)
・¿Me das tres de pastor?
(※ da が das になると、ぐっと砕けた言い方になります)
・Quisiera tres de pastor.
(パストールを3ついただきたいのですが。※かなり丁寧。屋台よりレストラン向き)
ただし屋台では、いちばんよく耳にするのは短い形のほうです。丁寧さは、言葉の長さより Buenas.(どうも)というあいさつと Gracias. で出ます。
肉の名前は「素材名」ではなく「スタイル名」のことがある
メニューを見て初学者がいちばん外すのが、ここです。
al pastor を辞書で引くと「羊飼い風」と出ます。ところが肉は豚(cerdo)です。羊はどこにも出てきません。
これは al pastor が素材の名前ではなく、調理法の名前だからです。縦向きの串(trompo)に肉を積み上げて回しながら焼き、外側から削いでいく——このやり方の名前が al pastor なんですね。
タコスの名前は、「何の肉か」を言っているものと、「どう焼いたか」を言っているものが混ざっています!
bistec や pollo は素材名、al pastor は調理法。全部を素材名だと思って読むと必ず外しますから、そこだけ気をつけましょう。
・al pastor(アル・パストール)= 縦串で焼いた豚肉。調理法の名前
・bistec(ビステック)= 牛肉。英語の beefsteak から来た語
・suadero(スアデロ)= 牛の腹まわりの部位。柔らかい
・pollo(ポジョ)= 鶏肉
・carnitas(カルニータス)= 豚肉を脂で長時間煮た調理法。これもスタイル名
・chorizo(チョリソ)= 味付きの豚ソーセージ
・campechano(カンペチャノ)= 2種類以上の肉を混ぜたもの。これも混ぜ方の名前
al pastor は、名前の意味も肉の正体も由来も、まとめて知っておくと屋台がぐっと面白くなります。詳しくは別記事で扱っています。
al pastor(アルパストール)の意味とは? 羊飼い風なのに豚肉である理由
「全部乗せ」は con todo ただし中身は店で違う
con todo は「全部と一緒に」、つまり全部乗せです。日本の「全部のせ」とほぼ同じ感覚で使えます。
ただし、日本の「全部のせ」と決定的に違う点がひとつ。
「全部」の中身が、店によって違います。
たいていは玉ねぎ(cebolla)とパクチー(cilantro)のことです。店によってはライムやパイナップルまで含みます。逆にサルサは別扱いで、con todo に入らないことのほうが多い——このあたりは店ごとの慣習です。
そうなんです。だから聞いてしまうのが正解です!
¿Qué lleva?(何が入るの?)
¿Con todo lleva cebolla y cilantro?(全部乗せって玉ねぎとパクチー?)
この llevar は「運ぶ」ではなく「(料理に)〜が入っている」の意味で使われます。屋台では毎日出てくる動詞なので、ここで覚えてしまいましょう!
con todo は使い方も注意点も多いので、こちらも1本の記事にしています。
con todo(コントード)の意味とは? タコスの「全部乗せ」と、抜いてもらう言い方
抜く・別にするの言い方
日本語話者にとって、ここは驚くほど簡単です。「〜抜き」「別添えで」を、私たちは母語で毎日使っているからです。
「抜き」と「別添え」のスペイン語
●sin cebolla(シン・セボージャ)= 玉ねぎ抜き
●sin cilantro= パクチー抜き
●sin nada= 何も乗せないで(=素の状態で)
●con todo menos cilantro= パクチー以外は全部
●la salsa aparte= サルサは別添えで
●todo aparte= 全部別々にして
sin は「〜なしで」、aparte は「別に、脇に」。日本語の「抜き」「別添え」がそのまま当たります。
語順まで同じですからね!
ただし、ひとつだけ真剣に注意してほしいことがあります。アレルギーがあるときに sin nada で済ませてはいけません。
アレルギーがあるときは「抜き」で終わらせない
sin nada(何も乗せないで)は、あくまで上に乗せる薬味の話です。
下ごしらえの段階で使われている材料は、これでは避けられません。
【アレルギーを伝える言い方】
・¿Lleva leche?
(乳製品は入っていますか)
・¿Lleva cacahuate?
(ピーナッツは入っていますか)
・Soy alérgico a los lácteos.
(私は乳製品アレルギーです。※話し手が女性なら alérgica)
・No puedo comer camarón.
(エビは食べられません)
alérgico / alérgica は、話している本人の性で形が変わります。女性なら Soy alérgica です。ここは間違えても伝わりますが、正しく言えるに越したことはありません。
辛さは con todo とは別の話
もうひとつ、初学者が混同しやすいところ。
con todo は「薬味を全部乗せるか」の話であって、「辛くするか」の話ではありません。
辛さはたいてい、テーブルに置かれたサルサで自分で調整します。だから聞くべきことは別にあります。
辛さについて聞く・答える
●¿Pica?(辛い?) ※ picar が「ピリッとくる」
●¿Pica mucho?(すごく辛い?)
●¿Cuál no pica?(辛くないのはどれ?)
●Poquito, por favor.(ちょっとだけお願いします)
●No muy picante, por favor.(あまり辛くないようにお願いします)
それ、けっこう有名な思い込みなんです!
辛さを決めるのは色ではなく、使っている唐辛子の種類と量です。ハバネロを使った緑のサルサは、グアヒージョを使った赤いサルサよりはるかに辛くなります。
だから色で判断せず、¿Cuál no pica? と聞いてしまいましょう!
ここで食べる? 持ち帰る?
屋台でほぼ必ず飛んでくる質問がこれです。
店員:¿Para aquí o para llevar?
(ここで食べますか、持ち帰りますか)自分:Para aquí.(ここで)
自分:Para llevar.(持ち帰りで)
llevar は「持っていく」。para llevar で「持っていくため = テイクアウト」になります。
さきほど出てきた「(料理に)〜が入っている」の llevar と同じ動詞ですが、こちらは元の「運ぶ」の意味そのままです。
会計は ¿Cuánto es?(いくらですか)か、¿Me cobra, por favor?(お会計お願いします)で通ります。
タコスの隣にあるもの——トウモロコシと飲み物
タコスの屋台の周りには、たいてい別の屋台が並んでいます。ここも語彙を知っていると一気に世界が広がります。
トウモロコシ:elote と esquites
elote(エローテ)は穂軸についたままのトウモロコシ、esquites(エスキーテス)は粒をカップに入れたものです。
日本の焼きとうもろこしを想像していると、味の方向でびっくりします。メキシコはマヨネーズ+粉チーズ+チリパウダー+ライム。しょっぱい・酸っぱい・辛いが同時に来ます。
elote(エロテ)と esquites(エスキーテス)の意味と違い
飲み物:agua fresca という一大ジャンル
大きなガラス容器に色とりどりの液体が入って並んでいる、あれが agua fresca(アグア・フレスカ)です。
「新鮮な水」ではありません。果物や穀物、花を水で割って砂糖を加えた飲み物のジャンル名です。horchata(オルチャータ)も jamaica(ハマイカ)も、この agua fresca の一種です。
agua fresca の意味とは? horchata と jamaica の正体
発音でつまずきやすい4点
カタカナで覚えていると、そのまま口に出しても通じないことがあります。よくある4つを先に潰しておきましょう。
発音の注意4点
●elote ⇒ 語末の e を必ず発音する。エローテ(× エロート)
●esquites ⇒ エスキーテス。スペイン語の qui は「キ」で、u は読まない(× エスクイーテス)
●jamaica ⇒ ハマイカ。スペイン語の j は英語の J とは別の音(× ジャマイカ)
●horchata ⇒ オルチャータ。h は完全に無音、ch は「チャ」(× ホルチャタ)
スペイン語の h は、どんな単語でも読みません! 例外なしです。
hola(オラ)、hotel(オテル)、hora(オラ)——全部 h を飛ばします。ここは「読まない」と一度決めてしまえば、二度と迷わないルールですよ!
文法の小さな罠
屋台の言葉は短い分、文法の落とし穴もはっきりしています。3つだけ挙げておきます。
1. 「タコス」は日本語では1個でも「タコス」
日本語では、1個でも10個でも「タコス」と呼びます。ところがスペイン語では1個は taco、2個以上は tacos です。
・un taco de pastor(パストールのタコス1個)
・dos tacos de pastor(パストールのタコス2個)※ 屋台では tacos を省いて Uno de pastor. / Dos de pastor. と言うのが普通です
ちなみに日本語の「タコス」は、複数形の tacos がそのままカタカナになったものです。だから単数形の taco が抜け落ちてしまうんですね。
2. tacos al pastor であって、tacos al pastores ではない
タコスが複数なので、つい後ろも複数にしたくなります。でも al pastor は「羊飼い風に」というやり方を表すひとかたまりなので、数に合わせて変化しません。
○ tacos al pastor / × tacos al pastores
3. con todo であって、con todos ではない
ここの todo は、「乗せるもの全部」というひとまとまりを指しています。個々の材料を数えているわけではないので、単数の todo のままです。
○ con todo / × con todos
いい気づきです!
「玉ねぎとパクチーとライムを、それぞれ全部」ではなく「乗せられるもの一式」をひとつの塊として指している——だから単数なんですね。日本語の「全部のせ」の感覚とほぼ同じです!
通しでもう一度やってみる
最後に、ここまでの語彙だけで作った少し長めのやり取りを見てみましょう。1文もつなげていないことに注目してください。
屋台での注文・完全版
自分:Buenas.(どうも)
自分:Dos de pastor y uno de bistec, por favor.
(パストール2つと、ビステック1つお願いします)店員:¿Con todo?(全部乗せる?)
自分:¿Qué lleva?(何が入るんですか)
店員:Cebolla y cilantro.(玉ねぎとパクチー)
自分:Sin cebolla, por favor.(玉ねぎ抜きでお願いします)店員:¿Salsa?(サルサは?)
自分:¿Cuál no pica?(辛くないのはどれですか)
店員:Esta.(これ)
自分:Poquito, por favor.(少しだけお願いします)店員:¿Para aquí o para llevar?(ここで? 持ち帰り?)
自分:Para llevar.(持ち帰りで)自分:¿Cuánto es?(いくらですか)
自分:Gracias, muy amable.(ありがとうございます、ご親切に)
そこが今回いちばん伝えたかったことです!
会話は長い文を作る力ではなく、短い文を必要な順に出す力で進みます。屋台はそれを練習するのに最高の場所なんですよ!
メキシコ料理・タコスの注文スペイン語のまとめ
●基本の型は「数+de+具の名前」⇒ Tres de pastor.(tacos は落ちる)
●con todo=全部乗せ。ただし中身は店ごとに違うので ¿Qué lleva? で確認する
●抜く・別にするは sin 〜/〜 aparte。日本語の「抜き」「別添え」がそのまま当たる
●アレルギーは sin nada で済ませず、¿Lleva leche? のように具体的に聞く
●辛さは別の話。色では判断できないので ¿Cuál no pica? と聞く
●料理名は素材名ではなくスタイル名のことがある(al pastor は豚肉)
この記事から続けて読みたい4本
- al pastor の意味:「羊飼い風」なのに豚肉。名前の正体と、赤い色の理由
- con todo の意味:「全部乗せ」の中身と、上手に抜いてもらう言い方
- elote と esquites:穂軸のままか、カップに入れるか。屋台のトウモロコシ
- agua fresca の意味:horchata と jamaica、日本のイメージとのズレ
「Taco al pastor – Wikipedia(https://es.wikipedia.org/wiki/Taco_al_pastor)」
「How to Order Tacos in Spanish Like a Local (in Mexico!) – Spanish and Go(https://spanishandgo.com/learn/how-to-order-tacos-in-spanish/)」
「What to Say at a Taquería in Mexico – Con Salsa(https://consalsa.app/blog/taqueria-spanish)」
「Salsa Verde vs Roja: Diferencias, Picor y Cuándo Usar Cada Una – Cocina Mestiza(https://cocinamestiza.com/salsa-verde-vs-roja-diferencias/)」