メキシコのスラング一覧【カタカナ発音つき】誰に・どこまで使っていいのかまで解説

コダック

今日のテーマは「メキシコのスラング」です!

メキシコのドラマや音楽を聞いていると、教科書に一度も出てこなかった単語がバンバン飛び交いますよね。güey(グエイ/ウェイ)no mames(ノ・マメス)órale(オラレ)chido(チド)あたりは、その代表格です。

この記事では、カタカナ発音つきの一覧と、「誰に・どこまで使っていいのか」という温度感をセットで整理していきますよ!

スラングの一覧って英語のサイトだとよく見かけるけど、読み方が書いてないんだよね。あと「これ言って大丈夫なの?」がいつも不安なんだ。

コダック

まさにそこがこの記事の狙いです!

スラングは「意味を知っている」だけでは使えません。同じ単語でも、相手や場面によって「親しみの証」にも「完全な失礼」にもなってしまうからです。意味と一緒に温度感を覚えていきましょう!

メキシコのスラングは「意味」より「温度感」で覚える

スラングを扱ううえで、まず頭に入れておいてほしい大前提があります。それは、メキシコのスラングは「意味の幅」ではなく「使ってよい相手の幅」で難易度が決まるということです。

たとえば chido は「いいね!」という褒め言葉なので、誰に言っても事故になりません。一方で güey は「おい」「なあ」という呼びかけですが、相手を間違えると「この人、失礼だな」で終わってしまいます。意味の難しさと、危険度はまったく別物なんですね。

スラングの温度は3段階で考えると迷わない

この記事では、すべての表現に次の3段階のマークをつけています。一覧を読むときの目印にしてください。

スラングの「温度」3段階

【◎】カジュアルな場なら初対面でもOK
⇒ くだけた言い方ではあるものの、聞き手を不快にさせる要素がない表現。市場やカフェで使っても問題なし。

【○】友達・同僚など、すでに打ち解けた相手に
⇒ 距離が近いことを前提にした表現。仕事の会議や目上の人には使わない。

【△】親しい友人限定/人に向けると失礼になりうる
⇒ 下品な語や、人を評価・分類してしまう語。意味は知っておくが、自分からは使わないのが安全。

そっか、日本語でも「マジで」と「クソ〇〇」じゃ全然レベルが違うもんね。

コダック

その感覚でぴったりです!

しかも外国語だと、自分では「マジで」のつもりが相手には「クソ〇〇」に聞こえている、という事故が起きがちです。だからこそ温度をセットで覚えることが大事なんですよ。

カタカナ発音は「アクセントの位置」だけ気をつければ通じる

スペイン語はローマ字読みに近いので、カタカナでもかなり通じます。ただし、メキシコのスラングには読み方を間違えやすい文字が集中しているので、先にここだけ押さえておきましょう。

  • h は読まないahorita は「アホリタ」ではなく「アオリタ」
  • j はハ行(喉の奥から出す息の音):híjole「イホレ」
  • ü(ウムラウト)は「ウ」を発音する合図güey の gü は「グウ」→「グエイ」
  • アクセント記号(´)がある母音を強く読むórale は「オレ」ではなくラレ」
コダック

特に órale は要注意です!

日本語の感覚で平坦に「オラレ」と読むと伝わりにくいので、頭の「オ」を強く、後ろを軽く落とすイメージで言ってみてくださいね。

まず押さえたいメキシコスラング4大表現

メキシコの日常会話で登場頻度が突出して高いのが、güey / no mames / órale / chido の4つです。逆に言えば、この4つの温度感さえ体に入っていれば、メキシコ人同士の雑談の「ノリ」の8割は追えるようになります。

ここでは4つを順番に、意味・語源・温度の3点セットで見ていきましょう。

1. güey(グエイ/ウェイ)【△】=「おい」「なあ」の万能呼びかけ

güey は、メキシコの若者会話でもっとも耳にする単語と言っても大げさではありません。日本語にすると「おい」「なあ」「お前」あたりが近い、相手への呼びかけです。

ところが辞書を引くと、この単語の出発点はまったく違うところにあります。スペイン王立アカデミーの辞書(DLE)では güey の語源を buey(=去勢した雄牛)と明記したうえで、意味は「メキシコ用法:愚かな人」と載せています。

güey
De buey1.
m. Méx. Persona tonta. U. t. c. adj.

日本語訳:buey(雄牛)から。名詞、メキシコ用法。愚かな人。形容詞としても用いる。

※参考・引用「Diccionario de la lengua española(RAE)

つまりもとは「牛みたいに鈍い人」という悪口だったわけですね。しかしメキシコ国内での使われ方はそこから大きく広がっていて、メキシコスペイン語辞典(DEM)は「若者のあいだで、聞き手の注意を引きつけ、仲間意識を確かめるための言い方」という語義まで立てています。悪口から相づちへ、意味が薄まっていった典型的なパターンです。

悪口が呼びかけになるって、日本語の「お前」とか「こいつ」に似てる気がするな。

コダック

いい着眼点です!まさに同じ道筋をたどった言葉ですね。

そして「お前」と同じで、使う相手を間違えると一瞬で失礼になるところまでそっくりなんですよ。

güey の基本例文

【呼びかけ・相づち】
・No, güey, te aseguro que no lo supe.
(いや、マジで、俺は知らなかったんだって。)

【3人称で「あいつ」】
・Había un güey parado en el zoológico.
(動物園に男が一人突っ立っていた。)

【本来の「バカ」の意味】
・¡Qué güey soy, no traje el pasaporte!
(俺ってバカだな、パスポート持ってこなかった!)

※例文引用「Diccionario del español de México(El Colegio de México)

表記についても迷いやすいポイントがあります。辞書の見出し語は güey ですが、SNSやチャットでは weywe と書かれることが圧倒的に多いです。読み方は同じで、実際の会話では頭の g がほとんど消えて「ウェイ」のように聞こえます。

güey / wey をもっと詳しく
表記の使い分け、発音のコツ、buey からの変化の過程、3人称で使うときの危険度まで、個別記事で深掘りしています。

güey(ウェイ)の意味とは?wey・we との違いと発音・語源をスペイン語初心者向けに解説

2. no mames(ノ・マメス)【△】=「うそだろ」「ふざけんな」の最上級

no mames は、驚き・呆れ・怒りをまとめて表現できる、非常に強力なフレーズです。日本語にすると「うそだろ」「マジかよ」「ふざけんな」あたり。ただし、この記事で紹介するなかで最も下品な表現でもあります。

もとになっている動詞 mamar は、本来「(乳を)吸う」という何の変哲もない単語です。ところがメキシコでは、これが下品な語義に転じたうえで否定命令形になり、DEMは No mamar を「軽率なことや、ばかげたことを言ったりしたりしない」と定義しています。

mamar(II. Groser =下品)
3 No mamar No decir o hacer cosas imprudentes o absurdas

日本語訳:no mamar =軽率なこと、ばかげたことを言ったりしたりしない。

※参考・引用「Diccionario del español de México(El Colegio de México)

アメリカ大陸のスペイン語をまとめた Diccionario de americanismos(ASALE)でも、mamar のメキシコ用法は「大げさに言う」とされ、vulg.(下品)のラベルがはっきり付いています。つまり「大げさなこと言うなよ」=「うそだろ」という発想の表現なんですね。

映画だとみんな普通に言ってるように聞こえるけど、そんなに下品なんだ…。

コダック

友達同士では本当によく飛び交います。でも辞書が「下品」と明記している以上、使える相手はかなり限られると考えてください。

そして便利なのが、この言葉にはマイルド版が用意されていることです。それが no manches(ノ・マンチェス)ですよ!

no manches の元になる動詞 manchar(=汚す)について、Diccionario de americanismos はメキシコ用法を「度を越す」と説明したうえで、euf.(婉曲語法)というラベルを付けています。これは「no mames と言いたいところを、音の似た別の単語に置き換えて角を取っている」という辞書からのサインです。

no mames / no manches の基本例文

【驚き】
・No mames, ¿en serio te compraste un coche?
(うそだろ、マジで車買ったの?)

【呆れ・非難】
・No mames, pinche Héctor, estás diciendo mentiras.
(ふざけんなよエクトル、お前うそついてるだろ。)

【マイルド版に置き換え】
・¡No manches! ¿Y luego qué pasó?
(うそでしょ!で、それからどうなったの?)

※一部例文引用「Diccionario del español de México(El Colegio de México)

no mames をもっと詳しく
どこまでが「驚き」でどこからが「怒り」なのか、no manches との使い分け、聞いたときの反応のしかたまで個別記事にまとめています。

no mames の意味とは?「うそだろ」の使い方と no manches との違いを初心者向けに解説

3. órale(オラレ)【◎】=「よし」「了解」「マジで!」の3役

órale は、4大スラングのなかでいちばん安全に使える表現です。DEMは órale に4つの語義を立てていて、大きく「促す」「受け入れる」「驚く」の3方向にまとめられます。

órale の3つの顔

①促す「¡Órale, a trabajar!(ほら、仕事だ!)」
⇒ 相手の背中を押す「ほら」「さあ」

②受け入れる「—¿Nos echamos unos tacos? —¡Órale!(—タコス食べに行く? —いいね!)」
⇒ 承諾の「了解」「いいね」

③驚く「¿Sacaste diez? ¡Órale!(10点取ったの?すごいじゃん!)」
⇒ 感嘆の「マジで!」「へえ!」

※例文引用「Diccionario del español de México(El Colegio de México)

1つの言葉で「さあ」も「了解」も「マジで」もいけるの?どうやって聞き分けるんだろう。

コダック

実は言い方(イントネーション)でほぼ決まります!

①の「促す」は短く鋭く、②の「了解」は軽く弾ませて、③の「驚き」は語尾をぐっと伸ばす。同じ órale でも、音の形が全然違うんですよ。

私、絶対イントネーション聞き分けられる自信ないよ…実際に混同しちゃう人とかいるのかな。

コダック

実は私自身、学習し始めのころにやらかしています!友達が失敗談を話してくれたときに、驚きのつもりで軽く「órale」と言ったつもりが平坦な言い方になってしまって、「了解」に聞こえたみたいで話をさえぎったような空気になっちゃったんです(笑)。イントネーションは本当に耳と口で覚えるしかないですね。

órale がありがたいのは、下品な語源を一切持っていない点です。DLEの記述では「口語。エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ用法」となっており、メキシコだけでなく中米でも通じるのも大きな利点でしょう。

ただし「口語(coloq.)」であることに変わりはないので、ビジネスの会議や目上の人への返事としては、素直に De acuerdo(承知しました)や Claro(もちろんです)を使ってください。

órale をもっと詳しく
3つの用法の見分け方、ándale との違い、短縮形 ¡ora! まで、例文つきで個別記事にまとめました。

órale(オラレ)の意味とは?「了解」「マジで」を使い分ける方法を初心者向けに解説

4. chido(チド)【◎】=「イケてる」「最高」のメキシコ限定ワード

chido は「かっこいい」「イケてる」「最高」を表す形容詞です。DLEは chido, da を「口語。メキシコ用法。①きれいな ②とてもよい」と定義しており、Diccionario de americanismos も同じ2つの語義を挙げています。

chido, da
adj. coloq. Méx. bonito.
adj. coloq. Méx. Muy bueno.

日本語訳:形容詞、口語、メキシコ用法。①きれいな、かわいい。②とてもよい。

※参考・引用「Diccionario de la lengua española(RAE)

使い方はとてもシンプルで、形容詞なので está / es とつなぐだけ。相手を褒めるときにも、モノを褒めるときにも、出来事を喜ぶときにも同じ形で使えます。

chido の基本例文

・¡Qué chido que les hayamos ganado!
(あいつらに勝てるなんて最高だ!)
・Está bien chido tu suéter.
(そのセーター、めっちゃいいね。)
・una casa bien chida
(すごくいい家)

※一部例文引用「Diccionario del español de México(El Colegio de México)

これは危なくなさそうだね。とりあえず chido から使ってみるのがよさそう。

コダック

大正解です!「褒め言葉のスラング」は失敗しにくいので、最初の一歩に最適ですよ。

唯一気をつけたいのは通じる範囲です。chido は辞書でも「メキシコ用法」限定。スペインやアルゼンチンで言っても、まず伝わりません。

chido をもっと詳しく
padre との使い分け、chido の強調形、他の国での言い換え表現まで、個別記事で解説しています。

chido(チド)の意味とは?「イケてる」を表すメキシコスラングの使い方を初心者向けに解説

メキシコの若者言葉 一覧【カタカナ発音つき】

ここからは、4大スラング以外でよく耳にする表現をジャンル別に並べていきます。各項目の【◎】【○】【△】は、記事前半で決めた温度のマークです。

あいさつ・相づち系

  • ¿Qué onda?(ケ・オンダ)【○】…「調子どう?」。DEMも「くだけたあいさつ」として登録。友達向け。
  • órale(オラレ)【◎】…「よし」「了解」「マジで」。上で解説した3役の万能語。
  • ándale(アンダレ)【◎】…「そうそう、それ!」「ほら、早く!」。動詞 andar の命令形から。相手の発言に同意するときの「それだよ!」が特に便利。
  • híjole(イホレ)【◎】…「うわあ」「参ったな」。驚きや困惑をやわらかく出せる、下品さゼロの感嘆詞。
  • neta(ネタ)【○】…「マジで」「ほんとに」。¿Neta?(マジで?)、la neta es que…(正直に言うと…)の形で頻出。
  • no manches(ノ・マンチェス)【○】…「うそでしょ」。no mames の婉曲版。テレビでも流せるレベル。
  • ¡aguas!(アグアス)【◎】…「危ない!」「気をつけて!」。DEMも「危険を知らせる表現」として掲載。水(agua)の複数形が警告になる不思議な表現。

人を呼ぶ・人を指す系

  • güey / wey(グエイ/ウェイ)【△】…「おい」「あいつ」。仲間内専用。
  • cuate(クアテ)【○】…「ダチ」「あいつ」。もとの意味は「双子」で、そこから「相棒」へ。ser cuate で「信頼できるいいヤツ」。
  • carnal(カルナル)【○】…「兄弟」「相棒」。DEMには「兄弟」「友人」の語義があり、男性同士の強い親密さを出す言い方。
  • chavo / chava(チャボ/チャバ)【◎】…「若者」「男の子/女の子」。恋人を指すこともある。
  • morro / morra(モロ/モラ)【○】…「若いヤツ」「彼女」。DEMは北西部(NO)の語として登録。地域色が強い単語。
  • fresa(フレサ)【△】…「お坊ちゃん/お嬢様」「意識高いお金持ち」。本来は「いちご」。人に向けるとからかいになるので注意。
  • naco(ナコ)【△】…「ダサい」「下品な」。DEMが「Popular y Ofensivo(俗語かつ侮辱語)」と明記している差別的な語。意味を知るだけにとどめ、絶対に使わない
コダック

この「人を指す系」がいちばん事故りやすいゾーンです!

理由はシンプルで、相手そのものにラベルを貼ってしまうから。モノを褒める chido と違って、外した瞬間に人格への評価になってしまうんですね。

ほめる・けなす系

  • chido(チド)【◎】…「イケてる」「最高」。
  • padre / padrísimo(パドレ/パドリシモ)【◎】…「すごくいい」。DEMも padre の形容詞用法を「とてもよい、とても楽しい」と掲載。¡Qué padre!(いいねえ!)は超頻出。padrísimo はその強調形。
  • buena onda(ブエナ・オンダ)【◎】…「いい人」「いい感じ」。Esa maestra es muy buena onda.(あの先生、すごくいい人だよ。)
  • mala onda(マラ・オンダ)【○】…「感じ悪い」「ひどいね」。¡Qué mala onda! で「それはひどい」。
  • sacar de onda(サカール・デ・オンダ)【○】…「面食らわせる」「困惑させる」。Me sacó de onda.(面食らったよ。)
  • agarrar la onda(アガラール・ラ・オンダ)【○】…「コツをつかむ」「意味が分かる」。Ya le agarré la onda.(やっとコツをつかんだ。)

生活まわり系

  • chamba(チャンバ)【◎】…「仕事」「バイト」。andar sin chamba(無職でいる)、buscar chamba(仕事を探す)。
  • ahorita(アオリタ)【◎】…「今すぐ」…とは限らないのが最大の罠。DEMの定義自体が「今、この瞬間、少し後で、あるいは可能になったときに」となっており、数分後から数時間後までを含むAhorita vengo.(すぐ戻るね=いつ戻るかは不明)。
  • chela(チェラ)【◎】…「ビール」。Vamos a tomarnos una chela.(ビール一杯やろうよ。)
  • crudo(クルド)【◎】…「二日酔いの」。本来は「生の」。Ando crudo.(二日酔いなんだ。)
  • antro(アントロ)【◎】…「クラブ」「飲み屋」。もとは「洞窟」「いかがわしい場所」だが、現在のメキシコでは普通の夜遊びスポットを指す。

ahorita が「すぐ」じゃないのは知らなかったな…。待ち合わせで泣きそう。

コダック

これは辞書の定義にきちんと書いてあるので、誤解ではなく仕様なんですよ!

急いでほしいときは ahorita ではなく、ahora mismo(今すぐ)en cinco minutos(5分で)のように、具体的に言うのがコツです。

「誰に・どこまで」使ってよいか——3つの安全ルール

一覧を眺めるだけでは、実際の会話でどう振る舞えばいいのかは決まりません。そこで、迷ったときに立ち返れる3つのルールを用意しました。

ルール1:目上・仕事・公的な場では、辞書に「口語」とある語を全部やめる

この記事で紹介した表現は、辞書上ほぼすべてに coloq.(口語)Popular(俗語)のラベルが付いています。これは「フォーマルな場では使いません」という辞書からの明確な警告です。

役所の窓口、面接、取引先とのやりとり、初対面の年配の方――こうした場面では、órale や chido のような「安全」な語も含めて、いったん全部封印してしまうのがいちばん確実です。

ルール2:相手が使ってきた語だけを、同じ強さで返す

いちばん実践的なコツがこれです。相手が güey と呼びかけてきたら、güey で返してよい。相手が no mames を使っていないのに、自分から no mames を投げるのは危険――そういう単純な原則です。

スラングは「その場の距離感を確認するための道具」なので、距離を縮める役は相手に任せて、自分は合わせに行くほうが圧倒的に失敗しません。

なるほど、自分から距離を詰めに行かなくていいってことか。それなら気が楽だな。

コダック

そうなんです。しかも相手の言葉をそのまま返すと、それだけで「ちゃんと聞いてくれている」という印象になります。

語彙を増やすより先に、この「合わせる姿勢」を身につけるほうが、実は会話がうまくいきますよ!

ルール3:モノを褒める語は安全、人を分類する語は危険

同じスラングでも、矛先がどこを向いているかで危険度がまったく変わります。

●モノ・出来事に向かう語 → 安全
chido / padre / chamba / chela / antro など。「その服いいね」「いい店だね」は、外しても誰も傷つきません。

●場の空気に向かう語 → だいたい安全
órale / ándale / híjole / ¡aguas! など。反応や合図であって、評価ではないためです。

●人そのものに向かう語 → 危険
güey / fresa / naco など。相手を「バカ」「お坊ちゃん」「ダサいヤツ」と分類してしまうので、関係性が出来ていない状態では成立しません。

30秒セーフティチェック:そのスラング、今言って大丈夫?

一覧のどの単語にも使える、3つの安全ルールをそのままチェックの形にしました。言う前に上から確認してみてください。

Q1. 今いる場面は、目上・仕事・公的な場ですか?
はい封印。◎の語(órale・chidoなど)も含めて全部やめ、genial/excelente のような標準語を使う。
いいえ(友達・カジュアルな場) → 下のQ2へ ↓
Q2. 使おうとしている語は、何に向いていますか?
モノ・出来事(chido・padre・chamba・chela など) → ◎ 安全
外しても誰も傷つかない。使ってOK。
場の空気・合図(órale・ándale・híjole・¡aguas! など) → ◎ 安全
評価ではなく反応なので、使ってOK。
人そのもの(güey・fresa・naco など) → 下のQ3へ ↓
Q3. (人を指す語の場合)相手はすでに、あなたに向かって同じ強さの語を使ってきていますか?
はい使ってOK
距離を詰めてきたのは相手。同じ強さで返すのが自然。
いいえ・まだ分からない使わない
自分から人を分類する語を投げない。相手の出方を待つのがいちばん安全。

※ この3問は、記事内の「安全ルール1〜3」をそのまま順番に並べたものです。güey・no mames・chido・órale 以外の一覧の単語にも、そのまま当てはめて使えます。

メキシコ以外でも通じる?スラングの地域差

「メキシコで覚えたスラングは、スペインや南米でも使えるの?」というのは、必ず出てくる疑問だと思います。結論から言うと、ほとんど通じません

典型例が「最高!」の言い方です。同じ意味を表す語が、地域ごとにまったく別の単語になっています。

「最高!」は地域でこう変わる

chido(チド)⇒ メキシコ
chévere(チェベレ)⇒ カリブ海地域、コロンビア、ベネズエラ、ペルー、ボリビアなど
bacán(バカン)⇒ チリ、コロンビア、キューバ、ドミニカ共和国など
guay(グアイ)⇒ スペイン

※いずれもDLEの地域表示に基づく。

興味深いのは、DLEが chido の項目に載せている類義語のなかに、まさに bacánguay が並んでいることです。辞書自身が「これは地域ごとの言い換えですよ」と示しているわけですね。

一方で、órale だけは例外的に広いのもポイントです。DLEはこの語をエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコの4か国で使われるものとして記載しており、中米まで含めてカバーできます。

同じスペイン語なのに、こんなにバラバラなんだ。じゃあ「どこでも通じる言い方」ってないの?

コダック

ありますよ!スラングではない普通の形容詞を使えばいいんです。

genial(すばらしい)、estupendo(すてきだ)、excelente(最高だ)――このあたりはスペイン語圏のどこでも100%通じます

スラングは「その土地の人と距離を縮めるための追加装備」だと考えて、土台には標準的な言い方を持っておくのが理想的ですね!

同じスペイン語でも国によってこんなに言い方が違うなんて、最初は正直びっくりしたよ。「1つ覚えれば全部通じる」と思ってたから。

コダック

私も学習を始めた当初、まさにそこで面食らいました!メキシコで覚えたchidoをスペインで使ったら「?」という顔をされて、標準語だと思い込んでいた単語が実はローカルルールだったと知って恥ずかしくなったんです。国ごとの色があると分かってからは、逆にその違いを楽しめるようになりましたよ。

ちなみに、メキシコ国内でも地域差はあります。一覧で挙げた morro / morra(若いヤツ)は、DEMが「北西部(NO)」の語として登録しています。メキシコシティで morro と言っても、まったく通じないわけではないものの、やや土地の匂いのする言い方になるわけです。

メキシコスラングのまとめ

以下、この記事の要点をまとめておきます。

●メキシコのスラングは「意味」+「誰に使ってよいか」の温度をセットで覚える
●4大スラングの温度感
órale(オラレ)【◎】=促す・了解・驚きの3役。中米でも通じる
chido(チド)【◎】=「イケてる」。モノを褒める語なので安全
güey(グエイ/ウェイ)【△】=「おい」。語源は buey(雄牛)=もとは悪口。仲間内専用
no mames(ノ・マメス)【△】=「うそだろ」。辞書が「下品」と明記。マイルド版は no manches
●安全ルール ⇒ ①フォーマルな場では全部封印 ②相手が使った語だけ同じ強さで返す ③モノを褒める語は安全・人を分類する語は危険
●地域差 ⇒ chido はメキシコ限定。どこでも通じさせたいなら genial / excelente などの標準語を使う

4大スラングの個別解説記事はこちら

それぞれの表現について、発音・語源・使い分け・注意点をさらに詳しく解説した記事を用意しています。気になるものから読んでみてください!

参考文献
「Real Academia Española, Diccionario de la lengua española(https://dle.rae.es/)」
「El Colegio de México, Diccionario del español de México(https://dem.colmex.mx/)」
「Asociación de Academias de la Lengua Española, Diccionario de americanismos(https://www.asale.org/damer/)」