Buenos días/Buenas tardes/Buenas noches という時間帯別の挨拶を、まとめて短くした形です。
「時間帯を言わずに済ませる」のがこの表現の正体で、お店に入るときの定番の一言としてよく使われますよ!
素晴らしい着眼点ですね!実はそこにスペイン語の名詞の性のしくみがまるごと詰まっているんです。
この記事を読み終わるころには、Buenas が女性形である理由がスッキリ分かるようになりますよ。順番に見ていきましょう!
Buenas の意味 ── 時間帯を気にしない万能の短縮挨拶
”Buenas(発音:ブエナス)”は、「どうも」「ちわっす」にあたる、くだけたスペイン語の挨拶です。
スペイン王立アカデミー(RAE)は、公式サイトの解説記事の中で buenas を「どの時間帯にも使える短縮表現」だと説明しています。
ここが Buenas の最大の魅力です!
「今は昼過ぎだから tardes でいいのかな…それとも、もう暗いから noches かな…」と迷わなくていいんです。時間帯の判断を丸ごとスキップできるわけですね。
初学者にとっては、これがとてもありがたいポイントですよ!
まずは土台:時間帯別の3つの挨拶
Buenas を理解するには、まず元の形を押さえておく必要があります。
スペイン語の時間帯別のあいさつ
Buenos días(ブエノス ディアス)
⇒ 朝から昼食まで。日本語の「おはよう/こんにちは」
Buenas tardes(ブエナス タルデス)
⇒ 昼食後から日が暮れるまで。日本語の「こんにちは」
Buenas noches(ブエナス ノチェス)
⇒ 日が暮れてから。日本語の「こんばんは/おやすみなさい」
日本語も「おはよう/こんにちは/こんばんは」と時間帯できっちり分かれていますよね。
だから日本語話者にとって、この3つの構造は説明されなくても直感的に分かるんです。ここはスペイン語学習で数少ない「日本語と発想が近い」場所ですよ!
ただし、日本語と違うところが2つあります!
①区切りが「食事の時間」で決まる
スペイン語圏では昼食が午後2時ごろと遅いので、Buenos días の守備範囲が日本人の感覚よりかなり長いんです。午後1時に Buenos días と言われて驚かないでくださいね。
②Buenas noches は「こんばんは」と「おやすみなさい」の両方
夜に会ったときの挨拶にも、別れぎわの「おやすみ」にも使う、一人二役の表現ですよ。
【本題】なぜ Buenos ではなく Buenas なのか
さて、いよいよ本題です。3つの挨拶をもう一度よく見てみましょう。
形をよく見比べてみると…
Buenos días ⇒ 男性形
Buenas tardes ⇒ 女性形
Buenas noches ⇒ 女性形
⇒ 3つのうち2つが女性形になっています。
違うのは名詞の性です!
スペイン語では、すべての名詞に男性・女性のどちらかが決まっていて、形容詞は名詞の性と数に合わせて形を変えます。
bueno(よい)という形容詞も、相手の名詞に合わせて bueno / buena / buenos / buenas と変身するんですよ。
それぞれの名詞の性を確認してみましょう。
- día(日):男性名詞 ⇒ el día ⇒ buenos días
- tarde(午後):女性名詞 ⇒ la tarde ⇒ buenas tardes
- noche(夜):女性名詞 ⇒ la noche ⇒ buenas noches
スペイン王立アカデミーの『スペイン語辞典』も、tarde を女性名詞として登録し、buenas tardes を挨拶の決まり文句として掲載しています。
ここまで来れば、答えはもう見えていますよ!
短縮形の Buenas は、女性名詞である tardes と noches のほうを引き継いだ形なんです。だから Buenos にはならないんですね。
名詞(tardes / noches)が消えても、形容詞だけが女性形のまま取り残されて挨拶になった——これが Buenas の正体ですよ!
ちなみに día は -a で終わるのに男性名詞
ここでもう一つ、初学者がよくつまずくポイントに触れておきましょう。
スペイン語では、-o で終われば男性名詞、-a で終われば女性名詞というのが基本のパターンです。ところが día は -a で終わっているのに男性名詞なんです。
そうなんです、día は例外として覚えてしまいましょう!
でも実は、この Buenos días という挨拶自体が、día が男性名詞であることを教えてくれる目印になるんですよ。
el día、buenos días、todos los días(毎日)。どれも男性形ですよね。挨拶をきっかけに文法が身につく、いい例です!
Buenas が使われる地域と場面
便利な Buenas ですが、2つの条件があります。ここは正確に押さえておきましょう。
RAEの解説によると、Buenas が使われるのはスペイン、ラプラタ川流域(アルゼンチン・ウルグアイ)、そしてアンデス地域と中米の一部とされています。
そして常にくだけた場面でのみ使われるとも明記されているんですよ。
よく気づきましたね、そこはとても大事なポイントです!
RAEが挙げている地域にメキシコは含まれていません。だからメキシコでは Buenas よりも Buenos días / Buenas tardes をきちんと言うほうが自然だと考えておくのが安全ですよ。
逆にスペインでは Buenas が本当によく飛び交います。旅行先によって印象が変わる表現なんですね。
Buenas を使うときの2つの条件
①地域:スペイン、ラプラタ川流域、アンデス・中米の一部
②場面:くだけた場面のみ
⇒ 面接、式典、初対面の目上の人などには省略せずに Buenos días / Buenas tardes を使いましょう。
実際の使い方 ── お店に入るときの定番
Buenas が最も活躍するのは、お店やバルに入るときです。
そのまま使える例文
・¡Buenas!
(どうもー)※店に入りながら、軽く。・Buenas, ¿qué tal?
(どうも、調子どう?)・Hola, buenas.
(やあ、どうも)※Hola とセットもよく使う。・Buenas, ¿tiene una mesa para dos?
(どうも、2人の席はありますか?)・¡Buenas!
(じゃあね)※別れぎわの一言としても使える。
スペインのバルやパン屋さんに入ると、店員さんもお客さんも当たり前のように ¡Buenas! と声をかけ合います。
日本のように黙って入って黙って出る、ということはあまりありません。ひと声かけるのがマナーという文化なんですね。
このとき Buenas が言えるだけで、ぐっと現地に馴染めますよ!
日本語話者にとっての Buenas ── 「お疲れ様です」に近い
この Buenas、日本語話者にはとても分かりやすい対応物があります。それが「お疲れ様です」です。
Buenas と「お疲れ様です」の共通点
●時間帯を選ばない
朝でも夕方でも夜でも使える
●言葉の意味そのものを伝えていない
「よい(buenas)」も「疲れている」も、実際の内容は問題にしていない
●とりあえずこれを言っておけば場が回る
挨拶としての機能だけが残っている
●くだけた場面向き
式典や面接には、もっときちんとした言い方を使う
その理解でバッチリです!
日本語は挨拶が時間帯で厳密に分かれる言語ですが、「お疲れ様です」という時間帯フリーの万能札を1枚持っているんですよね。
Buenas はまさにその万能札のスペイン語版。すでに持っている感覚を、そのまま移植すればいいんですよ!
Buenas の意味と使い方のまとめ
以下、Buenas についてのまとめです。
⇒どの時間帯にも使えるのが最大の利点
●なぜ女性形なのか=短縮の元になった tardes と noches が女性名詞だから
⇒名詞が消えて、形容詞だけが女性形のまま残った。だから Buenos にはならない
●día は -a で終わるのに男性名詞(だから buenos días)
●使われるのはスペイン・ラプラタ川流域・アンデスと中米の一部で、くだけた場面のみ
⇒フォーマルな場面では省略せずに Buenos días / Buenas tardes を使う
●Buenas noches は「こんばんは」と「おやすみなさい」の一人二役
Buenas は、たった3文字ぶんの短縮の中にスペイン語の名詞の性のしくみが詰まった、勉強しがいのある挨拶です。
理由が分かってしまえば、もう二度と Buenos と間違えることはありませんよね。次にスペインのバルに入るときは、ぜひ ¡Buenas! と声をかけてみましょう!
全体像をまとめた記事もありますので、ぜひあわせてご確認くださいね!
Real Academia Española「Español al día:¿Cuál es la fórmula de saludo más adecuada, «buen día» o «buenos días»? ¿Y durante la tarde y la noche?」(https://www.rae.es/espanol-al-dia/)
Real Academia Española「Diccionario de la lengua española(tarde/bueno, na)」(https://dle.rae.es/tarde)